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(184)地権者が抑えておくべきポイント!

投稿日:2023年5月31日


本トピックスでは再開発事業者側との条件交渉を行う際、地権者側として抑えておくべきポイントをいくつか列挙します。
過去のトピックスと重複する部分も多々ありますが、業者側の説明はもともとわかりにくい上に「落とし穴」まで存在するため、要点を何度も繰り返し論じることで、少しでも皆さまの理解が深まれば幸いです。

先ずは再開発の基本から

上記イメージ図をご覧下さい。
再開発事業(第一種市街地再開発)の大半は、地権者が主体となり事業リスクを背負って推進する事業で、再開発ビルの一部を主に再開発事業者へ売却することで、事業費の不足分(=支出から収入を差し引いたマイナス部分)を賄う仕組みです。
ここで売却する床のことを「保留床」、売却先である再開発事業者等のことを「参加組合員」、そして保留床を売却して残る部分を「権利床」と言い、地権者はこの残った「権利床」部分を無償で取得することが出来ます。(注1)

(注1):これに対し、当地区の住友不動産は「地権者は従前評価に応じた権利床を権利変換で取得する」などと説明しています。まるで「地権者は等価交換して終わり」と言わんばかりの説明で、まさにこれは「再開発ビルから保留床を差し引いた残りが権利床となる」と言う再開発の本質を地権者へ伝えようとしない曖昧な説明だと言えます。
なぜ住友不動産は地権者に対して事実を正確に説明しないのか?
その理由は地権者の関心が「保留床」に向かうことを回避させたいからだと考えられます。つまり「保留床が増えれば、その分、権利床は減り地権者は損をする」と言う再開発の本質に気づかれたくないからだと推測されます。その詳細については本文をご覧ください。

さて冒頭のイメージ図でもおわかりの通り、再開発事業者(参加組合員)への売却額は即ち「事業費の不足額」ですから、〇〇〇億円と言った具体的数字で決まります。一旦売却額が決まれば、あとは「保留床単価」をいくらに設定するかで、事業者側の得る保留床の面積が決まります。
計算式で示すと、保留床売却額=保留床単価x保留床面積となります。
当然、事業者側は単価を安く設定し、保留床面積を増やしたいと考えます。しかし再開発ビルの総床面積は一定ですから、保留床面積が増えればその分「権利床面積」は減ることになります。
つまり、再開発事業者と地権者とは利益が相反する関係にあるのです。
事業者側が不当に安い単価を設定すれば、地権者は損してしまう構図がそこにあります。
当然のことながら、再開発事業者はこの事実を地権者へ説明したがりません。事実を知られると、事業者側は思い通りに保留床を獲得することが難しくなるからです。
当地区の準備組合も「住友不動産は保留床を買う」と繰り返し言うばかりで、「どのように買う」かについては一切語ろうとしません。また準備組合が住友不動産と締結した「事業協力に関する覚書」も地権者に開示しようとはしません。皆さまも既にお気づきの通り、ここが「落とし穴」なのです。
安易に妥協すれば再開発は相手のペースで一気に進められてしまいますので各地の皆さまも、類似のケースにはお気をつけ下さい!

業者が仕掛ける多くの「落とし穴」にご注意あれ!


再開発業者は、実は地権者にとり「利益相反相手」であるにも関わらず、事業協力者の名目で準備組合内部に入り込み、あえて素人を役員に据えることで、その彼らに業務を再開発業者へ丸投げさせ、更には融資を通じて組合を借金漬けにすることで準備組合の実効支配を目論む。
今、そのような業者の手法が各地の再開発現場で表面化しています。
準備組合の傀儡化に成功すれば、あとは自社の息のかかった「鑑定士」や「コンサル」を起用して彼らに格安の「保留床単価」を算出させ、あたかもそれが相場であるかの印象操作を行うことで、いつの間にかこれを既成事実化してしまう。そのような彼らの手口が全国各地で明らかとなってきました。これだけに限りません。
彼らは床を独占したいあまり、地権者には床の追加購入を行わせない、いわゆる「増床制限」まで行うことが知られています。
彼らは更に自らの収益極大化のため、地権者に対し従前評価には開発利益を加味しないルールまで正当化しようとします。
上記は何れも法的根拠に乏しく、「地権者の無知」に乗じた身勝手な手法だと言っても過言ではありません。(注2)

(注2):もちろんすべての再開発事業者がそうだと言う訳ではありません。中には、地権者側の意見や要望を最大限尊重する善良な業者もいることを敢えて付け加えておきます。

地権者として抑えておくべきポイント

再開発は地権者の「無知」に乗じた地上げ事業だと言われています。
「不利な条件」を背負わされないために地権者が常に認識しておくべき重要事項があります。それは、
① 「保留床単価の決定」、
② 「増床ルール」、
③ 「従前評価方針」、
の3項目に関し、

地権者と再開発事業者とは利益が相反する

と言う事実です。
このうち、に関しては、再開発事業者との協議を経た上で決定する必要がありますが、それ以外のに関しては、原則として地権者側(再開発組合)の裁量で決めることができ、再開発事業者側の意見や要望に従う必要はありません。
再開発事業は「地権者が主体」で進める事業ですから、利益相反相手の意見や要望を考慮はしても、従う必要などないのは当然のことです。
この点を業者側に対し明確にしておくことは重要です。
これを怠れば相手のペースに巻き込まれ、「気が付けば不利な条件を背負わされていた」と言った結果となりかねませんのでご注意下さい。

尚、上記3項目それぞれの要点を「ワンポイント・アドバイス」として以下の通り並べてみました。

「保留床単価」が相場を無視した格安単価とならぬよう要注意!
(保留床単価が低いほど「権利床」は減って行き、地権者の還元率が減ってしまう!)
詳しくは以下のトピックスをご参照下さい。
(178)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(前編)
(179)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(後編)

「増床制限」は地権者の権利価値を下げるので要注意!
(「増床制限」は床を独り占めしたい業者側の身勝手なルールです!
そもそも都市再開発法に「増床制限」の規定など存在しません!)
詳しくは以下のトピックスをご参照下さい。
(182)業者が設ける「増床制限」の手口にもご注意あれ

「開発利益」を加味せぬ従前評価方針は地権者間の不平等を促進。
(特に転出者の場合、転出補償金の額が大幅に減ってしまう)
詳しくは以下のトピックスをご参照下さい。
(180)「開発利益」をめぐるカラクリと手口

まとめ

一旦再開発計画が立ち上がると、再開発事業者は「事業協力者」や「事務局」の名目で準備組合内部へ入り込んで来ます。
再開発は「地権者が主体」と言いながらも、現実には地元住民が単独でこれを推し進めることは難しいため、どうしても再開発事業者等の協力を仰ぐ必要が出て来ます。しかし、だからと言って彼らを全面的に信頼して業務を任せて良いわけではありません。なぜなら
地権者と再開発事業者とは多くの場面で利害が相反する関係にある
からです。
とりわけ再開発事業者の将来の収益源である「保留床」に関しては、床の「安値総取り」を狙った様々な「仕掛け」が設けられる懸念があるため、地権者側は細心の注意が必要となります。
万が一にも、再開発事業者側の起用した鑑定士などに「保留床単価」を安易に算出させるなどしてはいけません!
鑑定士だから公平で正確な数字を算出してくれるだろうと考えるべきではありません。黙っていれば「買い手が買値を決める」事態となりかねません。そのような相手に質問をしても、彼らは再開発業者の意向を忖度して「ああ言えばこう言う」式の弁解に終始することが知られていますので、彼らの言質は必ず記録した上で、真実か否かを見極める必要があります。

再開発は地権者の大切な土地資産の処分に関係する不動産取引です!安易に妥協したばかりに後日「こんな筈ではなかった」と後悔することだけは何としても避けたいものです。

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