人は酒を飲んで酔うと本心が出やすいと言った習性があります。特にストレスを抱えている人間がつい飲み過ぎてしまうと、普段は理性で抑えている本心が如実に表れてしまうものです。
今回は都内在住のある住民団体代表が、懇意になったコンサルと酒を飲みかわした際の体験談について書かれたコラムを、ご本人の許可を得て以下に掲載します。
【コラム】 コンサルも人の子
再開発で
① 「従前評価に開発利益を反映しない」
② 「分譲相場の半値以下の保留床単価」
③ 「従前面積以上の増床は禁止」
といった方針に組合役員を誘導し、地権者利益を損なう動きに徹底しているコンサルも、デベの呪縛から逃れ、一人の男に戻り、酒を飲むと以下のような本音を漏らすことがあります。
●彼ら(デベ担当者)は激安の保留床を総取りすることしか考えてない
●実際に合意形成を困難にしているのは地権者でなく彼ら(デベ担当者)
●地権者同士が争うよう仕向けるのは個人的にはどうかと思う
●地権者がしっかりしていて、保留床単価、従前評価方針、増床ルールについて、先にデベと話をつけてくれるとやり易い
●彼ら(デベ担当者)は地権者が怒り混乱した責任をコンサルに押し付けてくる
●彼ら(デベ担当者)の意向に沿ってコンサル業務をやると地権者から深く恨まれることがある
これらのコメントから分かることは、コンサルも金のためにデベの下僕として仕えているものの、本当は、
① 「開発利益反映の従前評価」
② 「分譲単価の75%程度の適正な保留床単価」
③ 「最低1区画自由に取得可ルール」
と言った公平・公正な方針で、トラブルなく権利変換が進むことを願っている真っ当な心を持った人の子であるということです。
実はデベの担当者たちも同様につらい?
コンサルだけでなく、実はデベロッパー側の現場社員たちも辛い状況にあるようです。サラリーマンの悲しき宿命と言うか、日頃コンサルに対し圧力をかけ続ける彼ら自身にも、背後には常に「上司」と「ノルマ」が付いてまわるからです。
驚いたことに、業界大手のデベロッパーの中には、いまだ「労働組合」が結成されていない企業まで存在します。そのような企業に就職した「現場担当社員」の労働環境が如何に大変かは言うまでもありません。
結果、デベロッパーの担当者たちも「再開発は地権者が主体の街づくり」だと頭の中では理解していても、ノルマに追われる彼らが会社から評価されるにはとにかく「再開発に持ち込むこと」が至上命令と言うことになります。コンサルに圧力をかけ、多少強引な手法を用いてでも地権者に「自社に有利な条件」を認めさせることに成功すれは社内で称賛されます。一方で、地権者側の要望に耳を傾け、「開発利益」、「保留床単価」、「増床ルール」と言った部分で少しでも譲歩すれば、たちどころに会社から叱責を受けると言った現実がそこにはあるようです。
まとめ
再開発はデベロッパーにとり「高収益ビジネス」であるだけに、彼らがコンサルへ圧力をかけ続け、地権者の利益を置き去りにしてでも強引に再開発を推し進めようとする背景には上述のような事情があると考えられます。
もはやそれは「地権者が主体」と言う再開発事業の本質からは完全に逸脱しており、その犠牲となる地権者はたまりません!
しかし、その中で一事例とは言え、コンサル担当者が「人として生まれ、それなりの良識と倫理観を兼ね備えた人間であること」が垣間見えたことは、地権者にとっては「一筋の光」だと言えないこともありません。
再開発は地権者の「無知」、「無関心」、「他人任せ」と言った前提の上に成り立つ事業であるだけに、地権者側も日頃から「知識」と「知見」を身に付ける努力を重ね、正論を以てデベロッパー側と堂々と渡り合って行く姿勢が大切です。
そして何よりも重要なこと。それは自身で十分「理解」し「納得」しない限り、デベロッパー側の提案には決して同意しないことではないでしょうか?