地権者が下した結論は「NO」!
泉岳寺周辺地区ではそのような動きが出て来ました。
港区役所は都市計画決定に際し「概ね80%の地権者同意」の取得を事業者側へ求めています。
一方、当地では住友不動産の勧誘開始から5年半経過した今も地権者全体の約4割が再開発に不同意であることから、結果として地元地権者は再開発に「NO」の判断を下した形となりました。
5年半が経過し不同意者の大半は「再開発には同意しない」意思を固めていることから再開発の推進はもはや困難な状況です。(注1) 今後、再開発事業者側が不正行為にでも及ばぬ限り、合意形成が成立する見込みはありません。
このような状況に鑑み地元「地権者の会」では、
住友不動産がこれ以上当地で勧誘を続けることは、
「街の将来」や「地権者の将来」にとり好ましくない(注2)
との判断から、住友不動産の泉岳寺地区からの撤退を促す姿勢へと方向転換を図ったようです。
同会では今後、具体的且つ明確な事由を掲げながら住友不動産に対し撤退を促して行くとのことですので、果たして住友不動産がどのような反応を示すのか? 今後も引き続き全国の皆さまへ進捗状況をお伝えして行く所存です。
実は住友不動産も自ら活動を停止?
今年に入り、少なくとも表面上は活動が沈静化したように見えます。当地区では最近住友不動産社員の姿を見かけなくなりました。彼らの事務所も営業時間が短縮され、日中も事務所を閉じている時間帯が増えてきた感があります。地元役員の出入りもなくなり、不当な鳥瞰図も撤去されました。説明会や勉強会も聞かれなくなりました。
そして何よりも、彼らの情報誌である
「準備組合ニュース」が発行されなくなりました!
今年の発行は僅か2回のみ。しかも中身は「タウン情報」ばかりで、「山積する多くの再開発問題」への言及など皆無です!
彼らは「情報提供」に加え「問題解決姿勢」まで放棄したのですから、住友再開発は実質的に頓挫したと見られても仕方がありません。
住友の当地残留が「好ましくない」理由(1)
このように表向きは活動が沈静化した住友不動産ですが、実際には彼らが当地から撤退しない限り、地権者は安心することが出来ません。地権者の知り得ないところでの「水面下の動き」があり得るからです。
あくまで一般論ではありますが、「合意形成」が得られぬ場合、一部の再開発業者が行う不正行為には、例えば以下のような手口があります。
① 個別地権者の買収
② 同意書の偽造改ざん
③ 業者所有地の細切れ分筆
上記は何れも都内各地で複数事例が実際に確認されています。
このうち社会が昨今注目し始めたのは土地の「細切れ分筆」です。「細切れ分筆」は業者の所有地を複数に分筆することで意図的に地権者を増やし「同意率を高める」と言った業界の「禁じ手」です。
これが実行されると全ての再開発事案が「出来レース」となってしまうため問題視されるようになり、メディアも強い関心を示し始めています。
(詳しくは、(109)虎ノ門でも同意者数の「水増し」が!及び(110)虎ノ門でも同意者数の「水増し」が!(その2)をご覧ください)
住友の当地残留が「好ましくない」理由(2)
住友不動産が撤退しない限り、他のデベロッパーが当地区へ参入できないと言った業界事情があります。このことはつまり、住友不動産が当地区に残留する限り、地権者たちは信頼のおけるデベロッパー探し等、様々な「選択肢」を検討する機会が奪われることになります。
住友不動産が当地に残留することで、膠着状態がこの先何年も続くとなれば、その間にマンション等の老朽化は着実に進行し、災害への危険度もますます高まって行きます。
そうなることを地権者は誰も望んでいません。
やはり住友不動産には当地から撤退願うのが最善の策と言えます。
しかし撤退させるのは容易ではない
地元では「住友不動産は撤退すべき」と考える地権者が増えて来ましたが、一方で、撤退するか否かの最終判断はあくまでも住友不動産側にあります。地権者側に強制力はありません。
他地区の事例を見ると、撤退どころか地権者が何れ「根負け」することを期待してか10年、20年と地域に居座り続ける再開発業者もいるので厄介です。例えば、港区内で進行中の「三田小山町西地区再開発」では準備組合設立から都市計画決定まで実に22年を費やし、30年目となった現在もまだ工事は始まっておらず、結局、竣工まで35年前後かかる計算となります。
このようなやり方をされたら、地権者はたまりません!
一方、業者の傀儡と化した準備組合も厄介な存在です。居座る再開発業者へ撤退を促すには準備組合理事たちの「良識」に基づく決断も不可欠ですが、傀儡化した準備組合組織内にいる地元理事たちをどう説得して行くか、更には業者から借り入れた数億円規模の借金をどう処理して行くのか、等が今後の課題として残ります。
まとめ
泉岳寺地区では5年半が経過しても都市計画決定に必要な「8割同意」は得られず(注3)、結果的に
地権者は再開発に対して「NO」の判断
を下した形となりました。
「NO」の判断が下された以上、
住友不動産には当地から撤退願うのが、
住友と地権者の双方にとり最善策
だと考えられます。
このまま膠着状態が続けば、住友不動産は逆に「地域発展の阻害要因」だと見做されかねません。何故なら、建物の更なる老朽化により自然災害への危険度が高まる一方で、地権者は他デベロッパーとの協議も含めた「新たな選択肢」を模索する機会が奪われることになるからです。(この点に関しての詳細は、(195)住友不動産が「地域防災」の妨げに?をご参照下さい。)
またこのまま膠着状態が続けば、業者側による「買収」、「偽造改ざん」、「細切れ分筆」と言った不正行為の可能性に地権者は警戒を強める必要も出て来ます。
「街の将来」を決めるのは地権者であり、
住友不動産ではありません。
この点を住友不動産は大手デベロッパー企業として十分認識すべきです。
合意形成が困難となった以上、
住友不動産はいつまでも
当地に居座るべきではありません!