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(203)えっ?この「土地登記簿」は何だ!? 

投稿日:2023年12月12日

百聞は一見にしかず!
先ずは添付の登記簿謄本をご覧ください。

不可解な共有名義物件

現場は東京都港区の三田小山町西地区市街地再開発事業。
ここは三井不動産や三菱地所レジデンスをはじめとする再開発事業者計4社が共同で進める木密住宅街の再開発事業です。
計画の初期段階から住民による強力な反対運動が展開されたこともあり、準備組合設立から都市計画決定まで22年もの長い時間を費やしたことで有名な現場です。
そして30年目となった今、住民の立退きが終わり、ようやく住宅の解体工事が始まったものの、本格工事は来年まで持ち越し。結局、竣工まで約35年かかる計算となります。
これほど長い時間がかかるのは再開発業者側も想定外だったようで、それだけに「地権者に対する様々な説得工作」が行われたであろうことは容易に想像されます。
さて、そのような現場で見つけたのが複数の不可解な共有名義の登記簿謄本です。
先ずは添付2筆の「土地登記簿」をご覧ください。
一筆目は93.74平米の土地(添付①)、
二筆目は50.97平米の土地(添付②)です。
何れも再開発区域内にある土地で、地権者と思われる42名の個人及び法人が、平成11年に共有名義にて土地の所有権登記を行っています。因みに、登記されている「共有者42名」の名簿は、両物件ともに同一です。単なる偶然とは言えぬ何かがありそうです。(注)

(注)添付の登記簿謄本は平成5年(2023年)1月に法務局にて取得した公的文書です。
因みに三田小山町の住所は「港区三田一丁目」になります。

いったい何の目的で?

真相はわかりません。
ここは典型的な木造住宅密集地域で、15坪前後の木造住宅が100軒以上ひしめき合う住宅街です。そのような地区で、なぜ一度に42名もの地権者(と思われる個人及び法人)が共同で所有権登記を、しかも複数の土地に対して行ったのか?
私たちは偉大な想像力を働かせてみました。
三田小山町と言えば、1キロ圏内に「六本木ヒルズ」や、今話題の「麻布台ヒルズ」を抱える都心の超一等地です。従い、地価も高く、個人が簡単に土地を購入できる場所ではありません。
平成11年に遡ったとしても、土地取得には億円単位の費用がかかったと推定され、たとえ42名が共有で取得したとしても一人当たりの取得費用は数百万円に上った筈です。到底個人で、しかも42名もの住民が纏まって負担できる額ではありません。もし金融機関から借り入れを行ったのだとすれば登記簿謄本上に抵当権が設定される筈ですが、そのような形跡もありません。現金取引とも考えられず、やはり真相はわかりません。まったくの謎です。

しかし思わぬ事実が!

私たちが着目したのは、

土地登記が準備組合の活動休止期間中に行われた

と言う点です。
地元民の反対に屈したのか、準備組合は平成10年(1998年)~13年(2001年)までの3年間、活動を休止しています。
今回、2筆の土地登記が行われたのは平成11年(1999年)。
まさに準備組合の活動休止期間中に登記がなされています。
単なる偶然なのか?それとも準備組合が活動を休止したと見せかけ、その間に水面下で地権者に対する裏工作を行っていたのか?私たちに真相はわかりません。

想像力を張り巡らしてみた!

推測ながらも考えられるのは、

地権者から「同意」を得たい再開発業者側が、
一部地権者の土地面積を一時的に増やすことで
当該地権者の従前評価額を割り増す工作をした

のではないかと言う仮説です。
一時的にせよ地権者の所有地を増やす形で「書類上の体裁」を整え、その事実を従前評価に反映させたのだとすれば、地権者なら誰だって喜びます。その分、再開発後に貰える従後資産(=権利床面積)が増えるからです。

真相はデベロッパーのみぞ知る?

今回の件は外部から情報提供があった事案で、当会でも早速、裏付け調査を試みました。しかし、いま現場へ出向いても地権者たちは既に不在であり、また現場一帯は立ち入り禁止のため当該物件を確認することも許されません。更に法務局で最新の登記簿謄本を取り付けようとしましたが、再開発の開始と共に地区一帯の登記内容は消去されており取得することができませんでした。(因みに、今回添付した登記簿は情報提供者が2023年1月に取得したものです)
従い、現段階で事情を詳しく説明できるのはデベロッパーのみと言うことになり、現在デベロッパー側と接点のある他地区の住民団体が別ルートで問い合わせを行っているようです。
彼らはどのような説明をするのか? 彼らは果たして真実を語るのか? 私たちも関心をもって注視しています。何か情報が入れば皆さまへご報告させて頂きます。

まとめ

結局のところ本件に関する真相はわからずじまいです。
しかし、もし再開発事業者側が「同意」を得る目的で率先して多数の地権者を土地の共有者に仕立て上げたのだとしたら言語道断です。
再開発事業では、業者が仕掛ける「落とし穴」が多いだけに地権者は常に警戒が必要です。
再開発事業者が

表向きは活動を休止したと見せかけ、
水面下で「買収」や「同意書集め」を行う

のは、他地区でも散見される業者側の手口の一つですので是非ともお知りおき下さい。

気が付いたら再開発は決まっていた!

と言う事態だけは何としても避けたいものです。地権者の皆さまはくれぐれもお気を付けください。

【事務局より一言】
実は三田小山町西地区では、今回取り上げた2筆の土地以外にも、別途30名を超える地権者(と思われる個人及び法人)による共有地が確認されていますが、複雑化を避けるため、今回は2筆の記述に限定しました。何れにしても、デベロッパー側が根拠ある正しい説明を行わない限り、登記簿をめぐる不透明感はぬぐい切れません。

添付①

添付②

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