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(191)日経新聞が「第三者管理」問題を報道!

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記事には住友不動産の社名まで!


7/25に掲載したトピックス(190)。そこでは、再開発終了後も「第三者管理方式」を以て地権者棟へ影響力を及ぼそうとする再開発事業者(=住友不動産)側の手法が、「住民自治の精神」に反するのではとして問題提起を行いました。
偶然ですが、日本経済新聞社も7/25付朝刊(東京版)において「第三者管理方式」の抱える問題を「費用の負担増」「責任の所在の不明確化」「利益相反」と言った観点から報じていますので是非ともご閲覧下さい。(注1)

(注1) 著作権法上の制約もあり、新聞記事をそのまま当HPにて掲載することはできませんが、「第三者管理」問題の本質が良くわかる内容ですので、是非ともデジタル版や日経テレコン等をご活用いただくか、或いは図書館等にてご閲覧下さい。
7/25付日経新聞(朝刊)の表題:「マンション修繕、住民不利益防止 – 理事会機能、管理会社への委託増 – 発注透明化へ国交省指針」

「第三者管理方式」とは何か?

そもそも、マンション管理は「住民の自治」が大原則です。
これに対し「第三者管理方式」と言うのは、区分所有者で構成される「理事会方式」に代わり、区分所有者ではない第三者がマンションの運営・管理を執り行う方式です。
そこでは「区分所有者の主体性がなくなる」と言ったデメリットがあることは言うまでもありません。
従い、この方式は「老朽化したマンション」や「投資用ワンルームマンション」などで「理事のなり手がいない」と言った「やむを得ない事情」が存在する場合に第三者へ管理全体を委託する方式だと一般には捉えられています。
地権者棟のように新築で、且つ「理事会方式」の希望者が多数存在するマンションにおいて、外部から提案があったから「そうですか」と言って安易に採用するような方式ではありません。
マンションにおける「住民自治の原則」に抵触するからです。

「第三者管理方式」の問題点

第三者管理方式は一般的には「理事のなり手がいない」場合に採用される方式ですから、住民の業務負担が軽減されると言う点においてはメリットがあります。しかし、その一方で「理事会」が本来持つ権限を第三者へ委ねるわけですから、そこでは「住民の声が反映され難い」「住民によるチェック機能が働かない」、と言った状況から管理者側が「利益を独占」しやすく、結果として「管理費が割高になる」などのデメリットが生じます。

【費用が割高になる】

例えば、第三者が「見積書も取らずに自ら工事を受注する」、或いは「自社の息のかかった業者に受注させ、その業者からキックバックを得る」(注2)と言ったケースも当然想定されます。

(注2)キックバックとは、紹介先業者などから謝礼目的で貰う金銭のことを言います。ビジネスの世界では一般的に行われている商行為で、それ自体に違法性はありません。しかし、紹介先の業者が最初からキックバック費用を見込んで水増しされた見積金額を提示して来る可能性もあり、そこに「理事会方式」のような住民による金額のチェック機能が働かない以上、結局は住民が割高な費用を払う結果となりかねません。

【利益相反の可能性】

第三者である管理者は、区分所有者の団体(これを一般に「管理組合」と言います)から委託されて管理業務を行う立場にある訳ですから、上述したような「自ら工事を受注する」、「紹介先業者からキックバックを得る」と言った行為は「利益相反」(注3)となる可能性も出て来ます。

(注3)この場合の利益相反とは、区分所有者の団体(管理組合)から管理者は委託されていますから、先ずは区分所有者の利益を第一に優先して管理業務を行わなければならないのに、管理者自身の利益を最優先することを言います。業務を委託されたものがやってはならない行為です。

また大手不動産会社の系列企業などへ「第三者管理」を委託する場合には、基本管理費そのものが割高になると言った現実を考慮する必要があります。また管理者側が用意した「管理委託契約書」のひな形を利用する場合には、委託者側(=住民側)に不利となる条文が随所に含まれている可能性もあるため、内容を十分精査し、更に弁護士等の専門家のチェックを経た上で契約を締結する必要が出て来ます。これを行わずに安易に契約書に捺印を行えば、後日トラブルが発生した際に管理者側への責任追及が困難となる恐れが生じますので注意が必要です。

国も「第三者管理」の弊害に気が付いた!

そのように7/25付日経新聞は報じています。
地権者棟も含めマンション管理は「住民の自治」が大原則です。
区分所有法では「管理の主体」は区分所有者等で構成される管理組合であると定めていますが、国土交通省は「第三者管理方式」に関して更に一歩踏み込んだ形で、

マンションは私有財産の集合体であり、その管理の主体はあくまでマンションの区分所有者等で構成される管理組合である。

とした上で、「第三者管理方式」に関連して、

管理組合は、区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また長期的な見通しを持って、適正な運営を行うことが必要である。特にその経理は、健全な会計を確保するよう、十分な配慮がなされる必要がある。また、第三者に管理業務を委託する場合は、その内容を十分に検討して契約を締結する必要がある。

と告示しています。(令和3年9月28日付国土交通省告示第1286号)

要するに、「第三者管理方式」は、管理組合の不利益につながる懸念が多い方式であると国も認識したため、「指針」作りに着手したと言うことなのでしょう。最終的に管理方式を決めるのは区分所有者側ですから、「国の指針」を待つまでもなく、今から基礎知識を身に付けると共に、自身で理解し納得しない限り「第三者管理方式」の提案には応じないことが肝要ではないでしょうか?

なぜ再開発業者は「第三者管理方式」にこだわるのか?

この方式が、業者側にとり貴重な「収益源」となることは上述した通りですが、この他にも様々な事情が存在するようです。
*住友不動産が主導する「三田三・四丁目地区再開発事業」に関して言えば、あくまでも推測ですが、再開発後に区分所有者側から様々な不満の声が噴出することを住友不動産側が察知し、予め「第三者管理方式」を採用することで、問題を表面化させず館内で抑え込んでしまおうとする意図があるのではと考えられます。
*更なる理由として、「歩行者デッキの維持管理費」を地権者棟の住民へ転嫁させたい意図があるからだと考えられます。
マンションの区分所有者たちはその実態を知らないようですから、もし「管理費に上乗せして負担」となれば、額によっては彼らの生活再建にも影響が及びかねず、騒動へと発展する懸念もあります。しかし、住友不動産の関係会社が「管理者」であれば、区分所有者の不満の声を封じることが出来ると同時に、区分所有者へ費用負担を「強要」することも可能になると考えられます。
事実だとすれば極めて不誠実なやり方だと言わざるを得ません。
(因みに、歩行者デッキをめぐる詳細に関しては、トピックス(190)再開発後に待ち受ける新たな地権者地獄(後編)をご参照下さい。)

まとめ

長かった再開発も終わり、権利変換でやっと新築の地権者棟へ移り住めたとしても地権者は安心するわけには行きません。
少なくとも住友不動産の再開発事業に関して言えば、再開発の終了後も、住友の関連会社が「第三者管理方式」を用いて地権者棟の管理・運営を行おうとする目論見が明らかになったからです。

マンション管理は「住民の自治」が大原則です!

「第三者管理方式」はあくまでも「理事のなり手がいない」、「理事会がうまく機能しない」などと言った場合にやむを得ず採用する方式だと一般には認識されています。
日経新聞は「第三者管理方式」をとると管理会社が大規模修繕工事の発注などの際に利益を図る懸念があると報じました。
ここにはありませんが、この他にも上述の通り、第三者管理方式をとれば、管理会社が自社利益のために勝手に契約を行う懸念も無いとは言えません。
記事では国土交通省も新たな指針作りに着手したことを報じています。

行政も「第三者管理」の弊害に気がついた!

この事実を、特に住友再開発区域内の地権者の皆さんはしっかりと認識しておく必要があります。
「こんな筈ではなかった!」と後で後悔しても手遅れだからです。

ではどうすれば良いのか?

様々な選択肢があると思いますが、地権者棟への入居が始まり、管理組合が形成された以上、先ずは「住民自治」の原則に基づき通常の「理事会方式」で管理・運営をスタートさせると言うのが基本ではないでしょうか?
そしてもしその「理事会方式」がうまく機能しなかった場合には、その時に「第三者管理方式」を含む代替方式を検討すると言うのが順序ではないでしょうか?

何れにしても、地権者棟で管理組合が形成され「独立したマンション」となった以上、内部の管理方式を決めるのは区分所有者であり、外部の「再開発組合」や「デベロッパー」ではありません。このことは極めて重要です。

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