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(192)住友の「再開発ビル」は空室だらけ?

投稿日:2023年8月10日

半分にも満たない入居率?

現場は東京都内の「JR田町駅」から徒歩5分と言う一等地に立地し、三田三・四丁目地区第一種市街地再開発事業(以下「三田3」と言う)で建設された地上42階建ての再開発ビル。
正式名は「住友不動産東京三田ガーデンタワー」と言い2023年3月に竣工し、オープンしました。
しかし竣工から約半年が経過した今も「床の6割が空室のまま」と言う実態が国道沿いからも確認できます。(上記画像をご参照)
住友不動産がテナント集めに苦戦している状況が見てとれます。
新規テナントとして入居したのは7フロアを借りた「京セラ」及び1フロアを借りた某インターネット関連企業のみ。他に「ユニ・チャーム」も3フロアへ入居しましたが、こちらは隣の住友不動産三田ツインビル西館からの横移動なので、単なる数字合わせの可能性があります。このため逆に隣の住友不動産ビルで空室が発生している様子が国道沿いからも推察できます(上記画像をご参照)。
結局、再開発ビルで入居が確認できるのは計11フロアのみ。
賃貸情報を見ても、未だに25フロアが「テナント募集中」であり、ロビー階を除く単純計算では「空室率60%」と言う信じ難い数字となります。このままでは事業として成り立ちそうにありません。

市況よりはるかに悪い三田3の空室状況!

一般に「空室率5%」が業界の好不況の境目だと言われています。
これに対し7月7日付「日本経済新聞」は、都心5区(港区含む)の6月のオフィス空室率が6.48%に達したと報じました。しかも新築ビルに限れば空室率は34.42%にもなるとの報道です。
昨今、都内各所で再開発による新築オフィスビルが(需要の減少にもかかわらず)大量供給され続けているため、高い空室率が生じているとして問題視されています。しかし市況の悪化を考慮したとしても、三田3での再開発ビルの「空室率60%」は突出して悪く、住友不動産の事業投資計画の甘さが露呈した形です。

近隣の新築「住友ビル」も実は空室だらけ


住友不動産ビルの突出した「空室率の高さ」は何も三田3だけの問題ではなく、近隣地区でも同様の状況となっているようです。
都内「JR大崎駅」、「JR五反田駅」の両駅から徒歩圏の地上19階建て「住友不動産大崎ツインビル東館」は2022年1月竣工。しかし、入居者が見つからなかったのか、竣工後も約1年に亘り全館が閉鎖された後、ようやく開館となりました。
しかし竣工から1年半が経過した今も入居者は少なく、路上から見る限り閑古鳥の状態です(上記画像をご参照)。
賃貸情報を調べても、現在合計13フロアが入居者募集中と言った状況にあります。
ここでもロビー階を除く単純計算では「空室率72%」と言う信じ難い数字となります。これでは事業として成り立ちません!
しかも、このビルはツインビルの1棟目であり、斜め向かいの敷地では2024年秋の竣工に向け、2棟目の「住友不動産大崎ツインビル西館」の建設工事が進行中と言った状況にあります。
こんなにオフィスビルを建設して、住友不動産はいったいどうするつもりなのでしょうか?
市況全体が悪いとは言え、私たちの地元で次々と竣工する住友不動産の新築ビルが軒並み60~70%の空室率だと言う現実は、住友再開発の計画区域内に住む地権者にとっては不安材料以外の何ものでもありません。

住友不動産は、
都心のオフィスビル建設が
極めてリスクの高い事業であることを
自ら地権者へ示す形となりました。

再開発区域内の地権者は要注意!

全国で行われている市街地再開発事業の多くは「第一種市街地再開発事業」ですが、この形態の再開発では、

事業リスクをとるのは地権者(=再開発組合)

であり、住友不動産のような再開発事業者ではありません。
それだけに他地区の地権者は、三田3の再開発ビルで発生した空室率問題を「再開発事業者側の問題」だとして単純に片付けるわけには行きません。
三田3の場合、保留床の処分後に表面化した問題であったため、
地権者は直接騒動に巻き込まれることも無く、運が良かっただけです。しかし、現在再開発計画が進行中の区域に住む地権者にとっては別問題です。今後も三田3のようにリスクが回避できる保証などないからです。

このことは再開発事業者の立場で考えて見れば一目瞭然です。
住友不動産は営利目的で再開発を進める不動産業者ですから、
三田3をはじめ、各地の再開発ビルでの高い空室率を目のあたりにすれば、当然、自社保有のオフィス床が再び空室化することを憂慮し、今後各地区では対策を講じてくることが予想されます。
その際、地権者として特に警戒すべきは

住友不動産による「保留床」の不当な安値購入

です。「保留床単価」を相場よりも格段に低く抑えることが出来れば、その分「テナント賃料」も安く設定できるので、「空室は解消」し、彼らの「収益が増える」と言う算段です。
しかし保留床単価が下がれば権利床が減り地権者は損をすると言う構図を地権者は決して忘れるべきではありません。
(詳しくは、トピックス(178)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(前編)をご覧ください。)

言うまでもありませんが、住友不動産の息のかかった鑑定士等に保留床単価の計算をさせるなど論外です!
泉岳寺地区の場合、住友不動産は「保留床を買う」とは言っても「いくらで買うか」については、その基準すら明らかにしません。ここが再開発業者の「手の内」ですので地権者は要注意です!
たとえ今後各地で「再開発ビル」を建設したとしても、結局業者側に相場より安く保留床を買い叩かれるのであれば、その分権利床は減ってしまい、地権者は「損」をする結果となります。
そのような再開発に地権者が参加するメリットなどありません!

まとめ

近隣地区の住友新築ビルの空室率が60~70%と突出して高い現実を地権者は直視(=問題視)すべきです。
8月3日付「日本経済新聞」によれば、深刻な不動産不況下にある中国では「1階買うと、もう1階プレゼント」を謳う不動産業者まで現れた由。
住友不動産も追い詰められれば何を仕掛けてくるかわかりません。仮に「保留床の安値買取り」が実行されれば損をするのは地権者です。
また住友不動産との間で事前に書面による取り決めが無い限り、再開発の道半ばで住友不動産が「保留床の買取り」を断念する懸念も無いとは言えません。代わりの買い手が見つからぬ限り、地権者はまさに「はしごを外された」形となります。残念ながら、これらも地権者が負う「事業リスク」の一部ですので特段の注意と対策が必要です。
地権者は誰も再開発後に「こんな筈ではなかった」と後悔したくはありません。
それだけに私たちは信頼できる再開発業者を選ぶことが何よりも大切です。地権者はもう一度、この問題を地域の皆さんと共に考え直してみる必要があるのではないでしょうか?

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