TOP_Topics 再開発、ここに注意

(207) デベロッパーは「防災対策」の阻害要因? 

投稿日:2024年1月15日

地域の防災対策は待ったなし!

元日に発生した「能登半島地震」で倒壊したビルの報道は泉岳寺のマンション住民に衝撃を与えました。当地区(泉岳寺周辺地区)では地権者総数約260名の9割にあたる約230名が1970年代に建てられた4棟の「老朽マンション」の区分所有者だからです。地権者総数で見る限り、当地区は「典型的な老朽マンション街」だと言っても過言ではありません。
これら4棟のマンションは何れも能登半島地震で倒壊したビルと同様、1981年以前の旧耐震基準により建てられており、既に築後約50年前後が経過していることから、「建替え」、「改築」、「耐震補強」、等の防災対策が急務となっています。
然しながら「再開発こそが唯一の選択肢」であるかの如く当地で活動を続ける住友不動産の企業姿勢が、ある意味で阻害要因となり、住民の思い通りに災害対策の実施が出来ない状況が過去から続いています。(注1)

(注1):例えば、当地区には「建替え推進決議」を行ったマンションまでありますが、再開発区域の中心部に位置する同マンションが単独で高層マンションに建て替われば、再開発計画自体が頓挫しかねず、このため住友不動産側の有形無形の働きかけもあり、決議から6年以上が経過した今も、建替えに向けた諸手続きが進められない状況にあります。

以下は、泉岳寺地区「地権者の会」が数日前に地元住民へ配布した「会報」を当サイト向けに編集し直したものです。
他地区のマンション区分所有者の皆さまにも参考になると考え、その内容を掲載することとしました。

マンション区分所有者は、
いつまで災害対策を先送りするのか?

泉岳寺周辺地区では再開発話が持ち上がって以来、主な防災対策が講じられることもなく、6年の歳月が経過してしまいました。

一方で、マンションの老朽化は着実に進んでいます。

災害はいつも突然やってきます。
発生してからでは手遅れです。

新年早々、能登半島地震で倒壊したビルが私たちに警鐘を鳴らしてくれました。当地区には「建替え推進決議」まで行ったマンションがあります。
しかし再開発側の強い働きかけもあり、今も建替えは進んでいません。
この他の主要マンションも1981年以前の旧耐震基準で建設されており防災対策が急務ですが、再開発話もあってか対策が進んでいません。

住友不動産が当地区で再開発への勧誘活動を始めてから既に6年が経過しました。しかしその間、「地権者の犠牲」のもとで再開発を一方的に進めようとする住友再開発の目論見が次々と表面化したことから、結局、再開発に必要な数の「地権者同意」は集まらず、当地区の地権者の下した住友再開発への結論は「NO!」でした。
再開発の実施が当面困難となった以上、住民には「突然の自然災害」から家族の命や財産を守るため、「意識の切り替え」と「対策」が急務です。

再開発にいつまでも期待し続け
災害対策を怠るなど本末転倒です!

マンション区分所有者は
防災対策を怠ったままで良いのか?

マンションの老朽化は着実に進んでいます!

いま大地震が来たらどうなりますか?人命が失われたらどうしますか?

災害が発生してからでは手遅れです

マンションには「管理組合」が存在し、そこには区分所有者の代表としてマンションの実質的な維持管理を行う「理事会」が設置されています。

理事会の責任と役割は重大です!

しかし、だからと言って理事会に任せきりにせず、先ずは区分所有者個々人が防災対策の必要性を自覚し、自ら積極的に声を上げることが何よりも大切です。これを行わないことには「理事会」としても動きようがないからです。
区分所有者の「無知」、「無関心」、「他人任せ」は致命的となりかねません。なぜなら昨今、再開発業者が「理事会」内部へ協力者を送り込み、再開発以外の選択肢を検討させない企てが各地で散見されるからです。
もし「再開発こそが唯一の選択肢だ!」として理事会が防災対策を怠り、その結果、被害が発生したら悲劇です。今こそ区分所有者一人一人が強い防災意識を持ち、対策の必要性を訴える時ではないでしょうか?

デベロッパーこそが防災対策の阻害要因?

「防災に強い街づくり」を標榜する再開発事業者の存在が、実は防災対策の妨げとなっていた? 残念ながら、これは現実にあり得る話です。
再開発業者が「マンション管理組合」を操り人形化する手口が各地で横行しているからです。その彼らの手口の一つは、マンション管理組合に声をかけ、そこの役員を「準備組合の理事」として迎え入れることで管理組合内に協力者を作ると言う手法です。準備組合の理事となった人物は、やがて業者に洗脳され、マンション内部で「再開発」以外の提案を排除するようになる傾向があるので要注意です。
(皆さまがお住まいのマンションではどうでしょうか?)
更に、「再開発以外の選択肢」を確実に排除するためか、最近では業者がマンション内の物件を地上げすることで業者自らが区分所有者となり、管理組合の理事会内部へ理事として入り込んだ上で、業者側理事が言葉巧みに外部の専門家を「理事長代行」などとして迎え入れようとする動きも一部の地域で散見されるので、区分所有者は要注意です。(注2)

(注2):本来は業者自らが「理事長」に就任したいのでしょうが、あからさまにこれを行えば館内はもとより世間の反発は必至であるため、上記のような間接的な形で「理事会支配」を目指すものだと考えられます。

この様な行為を許せば「住民自治の原則」自体が形骸化しかねません。
また、例え業者側が「地上げは合法的な経済行為」だと主張したところで、「建物の除却」を目的とする再開発事業者が「建物の維持管理」を目的とする管理組合内部に入り込み、館内で堂々と建物の除却を前提とする「再開発」への誘導を始めることには論理的矛盾もあり問題です。
本来、「再開発事業者」と「マンション管理組合」とは利益相反関係にあることを、この機会に是非とも皆さまご認識下さい。その上で、マンションの「防災対策」を妨げようとする不審な行為がないか、区分所有者一人一人が日頃から自分たちの「理事会」を監視して行くことが大切です。

それでもまだ「再開発」に期待し続けますか?

マンションの皆さまには是非とも「現実を直視」して頂きたいと思います。

①  たとえ1棟のマンションが同意しても再開発は進みません!

再開発はマンション単独ではなく地域全体の合意形成が要件だからです。
再開発に期待し続けて「防災対策を怠る」ことの危うさがここにあります。
一方、「防災対策」であればマンション単独で実行することが可能です。人命にも関る問題なだけに「どちらを選ぶべきか」を冷静にご判断下さい。

② 再開発は竣工まで20年前後かかる息の長い事業!

この「不都合な真実」を再開発業者は公に認めようとはしません。もし認めれば誰も再開発に同意しなくなるからです。災害は突然やって来ます。
再開発に20年も期待し続けている間に大災害が発生したらどうなるでしょうか?当地区(泉岳寺周辺地区)では既に6年が無駄に経過しました!

まとめ

「歴史は繰り返す」と言う言葉があります。
関東大震災から100年が経過し、再び能登半島地震が発生しました。
今回の地震で特筆すべきは、地上7階建てのビルが倒壊したことです。報道によればこのビルは1972年の竣工だそうで、まさに当地区の主要マンションと同年代の建築です。(注3)

(注3):【当地区マンションの竣工年】
*Aマンション:1972年
*Bマンション:1970年
*Cマンション:1970年
*Dマンション:1977年
[当地区では権利者総数の約9割が上記4マンションの区分所有者です!]

従い、今回の倒壊事故は決して「対岸の火事」ではありません。
あらためて各地のマンション住民の皆さんへも建物の耐震性への注意喚起を促したいと思います。

大震災はいつも突然やってきます!

当地区を例にとれば、地区内の主要マンションはどこも築50年前後。
老朽化への対策は「もはや待ったなし!」の状況です。

いつまでも再開発に期待し続け、
「防災対策」を怠るべきではありません。

「先延ばし」の間にもマンションの老朽化は着実に進行して行くからです。

災害は発生してからでは手遅れです!

人命にも関る問題だけに、マンション区分所有者の皆さまは、館内で防災対策について是非とも話し合って頂きたいと思います。

-TOP_Topics, 再開発、ここに注意

関連記事

(31) 住友不動産の弱点

有名企業ともなれば、一般的にメディアが発信する「負の情報」に対して極めて弱い体質があると言えます。これが企業としての「弱点」とまでは言えないにせよ、脆弱性があることは間違いありません。 住友不動産のよ …

(170)もし地権者棟が突然図面から消えたら?

地権者が主体となる再開発事業なのに、その地権者が権利変換で移り住む住居が図面から消えた! そんな馬鹿な話があるものかとお思いでしょう。しかし、現実に東京都品川区にある「大崎西口駅前地区市街地再開発事業 …

(145)「不安商法」は断じて許さない! 

不安商法とは、その名の通り住民へ過度に不安を煽ることで契約を獲得しようとする不当な商いのやり方を言います。 不動産分野で「不安商法」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、悪徳な「シロアリ駆除業者」や「リフォ …

(68)港区役所は公平・公正か?(その2)

本トピックスは(64)港区役所は公平・公正か?からの続きです。 やはり行政は「再開発ありき」だった? 実際に起きた事例を皆さまへ公開します。 (今回の事例) 不当に設立された準備組合  を認知してしま …

(127)ロシアのウクライナ侵攻から学ぶこと

2022年2月24日、突如としてロシアのウクライナへの侵攻が始まりました。 今や世界中が注目するウクライナ情勢ですが、視点を少し変えて眺めてみると、意外にもそこには再開発問題との共通点が多いことに気づ …