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(227)住友の「激安保留床単価」についての考察

投稿日:2024年8月7日


本トピックスは、
(217)住友の錬金術:1,300億円の事業で含み益が1,300億円?
(218)住友の錬金術(続編):もしも保留床単価が適正だったら…
の続きとしてお読みください。

法の趣旨まで無視する住友再開発の実態

南池袋二丁目における住友再開発では、総事業費1,279億円の事業に対し、住友不動産側が1,364億円を上回る「含み益」を竣工時に得るとの試算結果が出たことから、豊島区民が区へ問題提起する事態となっています。
再開発は補助金(=税金)まで投入される公共性の極めて高い事業ですから、再開発業者がこれほど「ぼろ儲け」して良いのか大いに疑問です。

「都市再開発法」は当然のことながら民間の再開発業者に莫大な事業利益がもたらされる前提では作られていない筈です。
「行政」も多額の補助金(南池袋では337億円)が支出される以上、再開発業者が莫大な「含み益」を得る実態について検証する必要があり、「知らなかった」で済まされる問題ではありません。
「地権者側」も、まさか再開発の「事業主体」であり「事業リスク」まで引き受ける自分たちを出し抜いて、住友不動産が莫大な開発利益を得るなどとは夢にも思わなかった筈です。

しかし残念ながら、

住友再開発における地権者を踏み台にした「ぼろ儲け」

の実態が地権者には見えてしまいました。
多額の補助金(=税金)が支出される事業である以上、私たちも再開発の基本理念から逸脱したこの実態について、行政や社会に対し問題提起して行く所存です。

「ぼろ儲け」のカラクリは激安保留床単価にあり!

過去のトピックスで何度も報じている通り、「ぼろ儲け」のカラクリは、住友不動産が、傀儡化した組合組織のもとで自社の息のかかったコンサルや不動産鑑定士を起用することで巧みに演出する「激安保留床単価」にあることがわかってきています。

再開発(第一種市街地再開発事業)は、再開発施設の一部を「保留床処分金」として参加組合員(=住友不動産等)へ売却することで事業費の不足分を賄う仕組みです。
「保留床処分金」=「事業費の不足額」ですから、その額は定数です。
しかしその支払いをもって参加組合員の得る保留床面積が決まるわけではありません。保留床面積は、保留床処分金を適正な「保留床単価」で割ることにより決定されます。これを数式で表すと、

保留床面積(坪) = 保留床処分金 ÷ 保留床単価/坪

となります。
この数式のもとでは保留床単価が安いほど保留床面積は増える仕組みなので参加組合員(=住友不動産)は儲かりますが、一方で、保留床が増えた分だけ地権者の権利床は減るので地権者は損をする仕組みです。
つまり、地権者と再開発事業者(=参加組合員)とは互いに利益が相反する関係にあります。このため、「保留床単価」は公平、公正、且つ透明性をもった形で住友不動産及び再開発組合(=地権者)の双方が納得する水準(即ち近隣相場に準じた水準)にて決定される必要があります。
しかし住友不動産はこの決め方を形骸化させてしまっています。
彼らは組合組織を傀儡化し、操り人形と化した組合役員たちを使い、自社の息のかかったコンサルや不動産鑑定士を起用させ、様々な理屈の下に近隣相場の半値以下と言った激安保留床単価を既成事実化させようとすることがわかってしまいました。
この点を指摘しても、業者側から聞こえて来るのは「決めたのは私たちではなく、組合の理事会です」と言う捨てセリフなので厄介です。

南池袋では近隣地区のタワマンの分譲相場が750万円/坪前後であるのに対し、住友不動産の保留床単価は306万円/坪と相場の半値以下でした。306万円で購入した床を750万円で分譲すれば、1坪あたり444万円もの「ぼろ儲け」となることくらい小学生でも理解できます。

住友不動産が南池袋二丁目で1,364億円もの「含み益」を得るカラクリは、彼らが巧みに演出する「激安保留床単価」にあることがはっきりと地権者に見えてしまいました。

そもそも「都市再開発法」自体がザル法である

「ザル法」とは、抜け穴の多い法律をさす俗語です。
再開発事業者に質問を投げかけると、彼らからは様々な回答が戻って来ます。それらの多くは一般の地権者には実にもっともらしく聞こえます。
しかし、詳しく検証してみると彼らの回答には法的根拠に乏しいものが数多く存在することに気付きます。
住友不動産の社員の口から頻繁に出て来るのは「法律に従って進めるので問題はありません」と言う言葉です。しかし、再開発を律する「都市再開発法」自体が曖昧な形で書かれていることから、再開発事業者側が自らに都合の良い条文解釈を行っている実態があることを地権者は忘れるべきではありません。
驚くことに「都市再開発法」には「開発利益」に関する条文がありません。地権者は「事業リスク」を背負って再開発を進める立場にありながら、そのリターンとして当然得られるべき「開発利益」に関する規定が都市再開発法には存在しないのです!何という事でしょう!
それを良いことに、住友不動産は地権者に対し「地権者は等価交換して終わり」だとの印象操作(マインドコントロール)を行うことで、「開発利益」をすべて住友不動産が独占してしまおうと企むのだと考えられます。
その様な状況下で住友不動産が「利益独占」の切り札として考え出したもの。それが「激安保留床単価」なのです。

住友再開発に潜む大きな矛盾

それは、準備組合段階から長い間地権者に寄り添って来た「事業協力者」としての住友不動産が、再開発の終盤になると今度は地権者とは利益相反関係にある「参加組合員」としての姿に変身し、自らが「事業協力者」時代に築き上げた「激安保留床単価」のための様々な仕掛けを使い、保留床の安値独占(=開発利益の独占)を目論むと言った矛盾です。

表面上は「事業協力者」を装いながら、その間に組合内部を傀儡化するなど着々と「激安保留床単価」正当化のための仕掛けを構築して行き、再開発の最終段階が近づくやいなや、手のひらを返したように「事業協力者」から「参加組合員」へと姿を変え、今度は地権者の権利床を犠牲にしても「保留床の安値独占」(=開発利益の独占)に向けてまい進する。
まさに矛盾そのものです。

そもそも住友不動産は参加組合員として保留床を購入する立場にありながら、同時にその購入額(=保留床単価)をも実質的に決めてしまう。
つまりそこには「買い手が買い金額を決める」と言った矛盾が生じており、これが公正な取引原則に反する行為であることは言うまでもありません。

しかも参加組合員を「公募」で決めたのであればまだしも、住友不動産が横滑り的に参加組合員になっていたとすれば問題であり、税金も投入される再開発事業に於いては「あってはならない」ことだと言えます。

残念ながら、この時点で地権者が罠に気付いても「時すでに遅し」です。
不透明なプロセスに異議を申し立てたとしても、再開発業者から聞こえてくるのは「決めたのは私たちではありません。地権者の皆さまで構成される再開発組合が決めたことです」と言う捨てセリフです。

再開発業者は地権者の「無知」に付け込み、よくもここまで巧妙な仕組みを築き上げたものだと感心すらしてしまいます。
果たして地権者の皆さまはこのような再開発に積極的に応じたいと思うでしょうか? 是非とも、よくお考え頂きたいと思います。

まとめ

一般の地権者は、どうしても自分たちの資産に直接かかわる「従前評価」や「従後資産」、「権利床」と言った部分に目が行きがちです。また再開発業者側も地権者の関心を「保留床」に向かわせないために、さかんに「従前評価」や「権利床」と言った話ばかりを持ち出すことが各地で知られています。
しかし、権利床面積を決める際に重要なのは保留床単価です。
そして地権者が目を向けるべきは、再開発業者が「ぼろ儲け」の切り札として設ける激安保留床単価であることをしっかりとご認識ください。

実は「保留床単価」こそが
地権者の権利床面積を決める要因

だと言う点を地権者はこの場でしっかりと認識する必要があります。

住友再開発では、近隣相場の半値と言った「激安保留床単価」が設定される懸念がありますが、「激安保留床単価」は住友不動産が得る保留床面積を大きく増やす一方で、地権者が得る権利床面積がその分だけ減ってしまうため地権者は確実に損をします!
まさにこの点が

住友再開発は無知な地権者の犠牲の上に成り立つ事業

だと世間で言われる所以です。
地権者は一人でも多くがこのカラクリに気付くことが肝要です。

住友不動産が無知な地権者を相手に、様々な「仕掛け」や「巧言」を用いて再開発事業を強引に推し進める時代は終わりました。
今や地権者は「知識」と「知見」を身に付け、各地区の住民間で「情報共有」まで始めており、もはや「無知」ではないことを住友不動産は認識すべきです。

住友の「ぼろ儲け」の源泉は
「激安保留床単価」にある!

このことが地権者にもわかってしまった以上、住友不動産は先ずは一旦初心に戻り、今後は「隠し事」や「虚偽の説明」などせず、地権者の質問や要望に誠実に書面で答え、「信頼関係」を築いていくことこそが重要ではないでしょうか?
地権者はこの点をしっかりと見ています。
具体的な再開発の話はそれからです!

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