こんなに違う地権者対応!
森ビルと言えばあの「六本木ヒルズ再開発」を成功に導いた事業者として有名です。
その六本木の地で再開発の話が始まったのは1986年。
そこから4年をかけて住民を集めた勉強会が続けられた結果、多くの地権者の理解が得られたとして1990年に準備組合が設立されています。
80年代後半と言えばバブル経済の真っただ中です。当初は再開発に大きな期待をよせた地権者も多かったであろうと推測しますが、1990年に準備組合が設立された直後にまさかのバブル崩壊が発生します。
年々下落して行く不動産相場を横目に、再開発後の権利と保証を森ビル側に求めた「住民運動」が展開されて行きました。
泉岳寺・地権者の会ではかつての「再開発反対の会」(以下「反対の会」と言う)のメンバー及び事業者側の関連企業を訪ね、当時の話を伺いました。
再開発事業者はどこも同じだろうと思っていた私たちには「目から鱗」でした。
森ビルはここが違う!(その①)
森ビルは社長自らが「反対の会」との直接対話に応じていました!
先ずは添付書簡をご覧下さい。これは森ビルの社長が「反対の会」に対して発行した書簡です。同社長は実際に何度か地元地権者団体との直接対話にも応じて来られたそうです。
森ビルにとり「六本木ヒルズ再開発」はまさに社運をかけたビッグプロジェクト。
同社としてこの再開発は何としてでも進めたかったようで、「反対の会」との交渉窓口として同社役員を2名(専務と常務)も任命するほどの力の入れようで、当時の森ビル社長の再開発への意気込みが今も伝わってきます。
一方、住友不動産はどうなのか?
地権者が接する相手は泉岳寺の準備組合事務所に常駐する住友不動産社員たちだけです。彼らは重要事項に関する決定権を有していません。決定権を有する事業責任者の顔は見えません。
この体制で、今も山積する難題をどうやって解決しようというのでしょうか?
彼らの地権者に対する姿勢は森ビルとは決定的に異なっています。
森ビルはここが違う!(その②)
森ビルは保留床の一部を地権者のために提供しました!
いくら事業者から「持ち出しなしで新築マンションに住めますよ」と言われても、入居後の管理費・修繕積立金が高額となれば「生活再建」は出来ません。
特に年金生活中心のご高齢の方々にとっては死活問題です。
六本木ヒルズで試算された標準家庭の維持管理費はなんと月額12万円!
これに驚いた「反対の会」は、住民が「経済的に住み続けられる」ことの確認を森ビル側へ要求。その結果、森ビルは住宅管理費を補うための仕組みとして、保留床の一部を地権者へ提供し、そこで得られる賃料を管理費の一部として充当することを書面にて提示したのです。
これにより、月額維持経費が12万円から3万円程度にまで減ることとなり、その後再開発は一気に加速して行ったのだそうです。
一方、住友不動産はどうなのか?
地権者に対しては等価交換以上の提案には一切応じようとせず、等価交換すら書面での保証をしません。再開発事業の実態は「ビルの大半を再開発事業者が独り占めしようとする地上げ事業」です。事業者の取り分(保留床)は地権者の取り分(権利床)の何倍も多いと言うのにこの対応です。
地権者の声を聞こうとしない住友不動産は、明らかに森ビルとは異なります。
森ビルはここが違う!(その③)
森ビルは区域内のビルの「単独建替え」の要望に応じました!
当時、区域の南東側に位置していた「スウェーデンセンター」並びに他1棟は単独建替えの意思が強固でした。森ビルはこうした地権者の強い要望を聞き入れ、最終的にこれら2棟を再開発区域から外したのだそうです。
一方、住友不動産はどうなのか?
泉岳寺の再開発区域内には「コープ高輪車坂マンション」と言う、単独建替えを検討中のマンションがあります。まさに六本木の「スウェーデンセンター」と同じ状況にあるマンションです。
しかし、住友不動産はどのような対応をしているのか?
マンション住民による単独建替えの意思を尊重するどころか、これを「阻止」する構えで臨んでいます。住友不動産は建替え計画のはるか後に泉岳寺へやってきて、そして一方的に線引きをされたことに多くの住民が怒っていると言う状況にも係わらず、このような強硬な対応なのです。
森ビルとはやり方が真逆です。
このようなやり方で果たして再開発が進むのか心配になります。
まとめ
結局、森ビルは「反対の会」を含む地域の地権者たちに対し、「住宅管理費の低減」並びに「権利変換率」の双方に関する保証を書面にて示すことで再開発を前進させました。
もし再開発が住民の利益になるとの確証があるのなら、住民の疑問や要望に答え、抽象的な形ではなく具体的にそれらを書面にて提示すると言うのがデベロッパーの役割であり責務です。
少なくとも森ビルはこれを行いました。
住友不動産はこれを行おうとしません!
私たちも再開発業者を見る厳しい目を持つことが必要ではないでしょうか?
いま泉岳寺では準備組合をめぐり多くの疑念が生じており、その正当性が問われています。
このため私たちは「事業者」である準備組合に対し直ちに全体説明会を招集し理事たちが自らの口で数多くの疑念に対する説明責任を果たすよう要請しています。正当性が問われている以上、これを行わない選択肢はない筈です。近隣地域で新たな再開発を控える住民たちも推移を見守っています。
準備組合には直ちに全体説明会を開催し、疑念を払拭して貰いたいものです。
【備考】 泉岳寺における「準備組合の実態と問題点」については、当ホームページ内のトピックス(24)(25)(27)(28)をご覧下さい。
(24) 準備組合の実態はこれだ!(その1)
(25) 準備組合の実態はこれだ!(その2)
(27) 準備組合は謎だらけ(その1)
(28) 準備組合は謎だらけ(その2)