本トピックスは、泉岳寺「地権者の会」が最近地元で発行した「会報」の一部を当ホームページ向けにアレンジし直したものです。内容の多くは既に当サイトにても随所で公開済ですが、地権者目線で見た再開発事業の問題点を、簡潔でわかりやすく解説しているので、あらためて掲載することにしました。
「会報」の記事はあくまでも泉岳寺の地権者を対象にしたものですが、住友不動産が各地で推進する再開発事業はどこも似た手法がとられているようですので、他地域の地権者の皆さまにも参考として頂ければ幸いです。
再開発事業は問題だらけ
そもそも再開発の実態は「ビルの大半を事業者が独り占めしようとする地上げ事業」であることがわかって来ました。埼玉大学名誉教授の岩見良太郎氏が以前に大都市圏で保留床を伴う再開発事業について行った調査では、再開発後の資産の取り分比率は、どこも概ね「事業者8割」に対し「地権者は2割」だったそうです。再開発ビルで大幅に増加する「床面積」の大半は事業者が獲得し、地権者は等価交換分しか貰えないと言う構図です。
再開発は地権者が供出する土地があってこそ実現出来る事業です。もし地権者の取り分が僅か2割だとわかれば、多くの地権者は同意をためらう筈です。
そこで事業者は「森を見せずに木だけ見せる」戦略を取るのだと考えられます。
住友不動産は「持ち出し無しで新築マンションに移り住めますよ」と言った地権者が身近に興味を示す「木」の部分の話はしても、具体的な事業の全体像や基本計画と言った「森」の部分には触れようとしません。「森」を見せれば当然反発が予想されるため、彼らは「木」の部分ばかり見せることに集中するのです。
もし再開発に懐疑的な地権者がいれば、彼らは「大丈夫です」、「努力します」などと言って問題がないことをさかんに演出しようとします。しかしそれは主として口頭での話であり、地権者が真に知りたいこと、とりわけ資産の扱いについてそれを書面で保証しようとはしません。
更に懐疑的な姿勢を続けていると、次に出て来るのが「ぜひ一度お話を…」のキャッチフレーズで始まるお馴染みの「個別面談のお願い」です。
しかし、知識と経験に劣る個人の地権者が丸腰で再開発のプロ相手に個別面談を行えば、どのような結果となるかは推して知るべしです。
個別面談を否定はしませんが、面談の際には専門家等の同席が強く望まれます。そもそもなぜ事業者は全体集会を避け、敢えて個別面談に持ち込もうとするのか?その理由を良く考えて頂ければ自ずと答えは出て来る筈です。
もう一つの深刻な問題は彼らが作った「準備組合」の仕組みです。
住友不動産が全体を牛耳る事業であることは今や誰もが知っています。しかし不思議なことに住友の社名は決して表には出てきません。代わりに「準備組合」なる任意団体が窓口となり、地権者から「白紙委任状」とも言える不平等な内容の「同意書」を取ろうというのです。良く考えてみれば不自然な話です。
「準備組合」と言う任意団体の隠れ蓑をかぶりながら、その実、再開発の初動調査から計画決定までの一切を住友不動産が裏で牛耳ろうとするのですから、よくもこんな制度を考えたものだと感心する地権者さえいます。
もし住友不動産が直接地権者との間でこのような話を進めたならば世間から注目されかねません。
しかし「準備組合」なる任意団体を窓口に据えておけば、ある程度手荒な手法を用いても大丈夫だと言う彼らなりの計算があるのだと推測します。
その代表例が「同意書」の中身です。これほど地権者にとり不公正で不平等な内容の同意書を、もし住友不動産が直接地権者から取付けようとしたならば世間で問題とされることでしょう。
(詳しくは(42)これが同意書の正体だ!をご参照下さい)
このように「準備組合」は住友不動産にとり、実に都合のよい仕組みなのです。逆を言えば、地権者にとっては都合の悪い仕組みなのです。
その「準備組合」も、実は不当に設立されていた事実が、港区への情報公開請求で得た公式文書から明らかとなりました。
(詳しくは(34)準備組合は謎だらけ(その3)をご参照下さい)
なんと再開発とは全く関係のない2つの協議会組織が設立根拠とされていたのです!しかもそれらの協議会のメンバーに地権者は7名しかいませんでした。
僅か7名の地権者で260名の住むエリアを再開発区域として囲ってしまったことになります。常識では考えられない不当な行為です。多くの地権者が突然再開発区域に組み入れたれたことに反発し、今も「同意」を行わないのは当然です。
その不当に設立されていた準備組合が発行する「準備組合ニュース」の信頼性にも当然のことながら疑問符がつきます。実際にその中身たるや、あたかも再開発は半ば決まったかのような「演出」や「巧みな言葉」であふれています。
その具体的事例については、追って後日、特集を組みたいと考えています。
このように住友不動産が行う再開発事業は問題だらけなのです!
地権者に対して不利となる数多くの不公正・不公平な仕組みや手法が是正されれば再開発計画は進むかも知れないのに、なぜ彼らはそれらを改めようとしないのでしょうか?最初から弱い立場にある地権者を相手に残念でなりません。
住友不動産は誰もが知る「住友グループ」の立派な一員なのですから、この企業には是非とも「地権者を含む社会との良好な関係」を構築して貰うと共に、誰もが認める「健全なる企業活動」を実践して貰いたいものです。
【備考】
因みに、泉岳寺「地権者の会」は、決して再開発そのものに反対する団体ではなく、また住友不動産の行う事業を否定しようとするものでもありません。
あくまでも住友不動産が立場の弱い地権者に対して行う様々な不公正・不公平なルールや手法の是正にその主眼を置いており、引き続き「不平等の根絶」を目指して幅広く活動を展開して行くとのことです。