トピックス(48)再開発中断の申し入れからの続きです。
前トピックスでは、コロナ禍を契機に「再開発事業に対する見方や考え方を変えるべきだ」との考えから、泉岳寺では地権者を含む地域住民442名が連名で、現行再開発計画がこれ以上進められることは支持できないとして港区長に対し再開発中断の要望書を提出したことをお伝えしました。
コロナ禍により社会経済情勢が急激に変化し、いままで再開発事業を支えてきた前提条件そのものが崩れつつある中で、地域住民も再開発に対する見方や考え方を大きく変える必要があります。
もしこのまま現行再開発計画が推し進められれば、地権者や周辺住民が将来損失を被る懸念が一層高まるからです。
各地の地権者もコロナ禍のもたらす悪影響を心配している!
実は、このコロナ禍を事由とした現行再開発計画中断への要望は、なにも泉岳寺に限ったことではなく、都内各地でも「地権者の声」として徐々にではありますが広がりを見せつつあるようです。
今回の「要望書」提出に際しても、署名活動が行われている事実を知った都内各地の多くの地権者団体から「支援書」が代表者宛に寄せられ、これらも「要望書」に添付する形で「支援者の声」として港区長へ届けられました。
実際に「地域住民の声」の結果かどうかまではわかりませんが、行政もコロナ禍により、現行の再開発事業が成り立たなくなりつつあることを認識し始めているようです。
兵庫県芦屋市などではコロナ禍による景気悪化の不安から市が再開発事業の見直しに着手したことが報じられていますし、東京都内でも既に再開発計画の一部中止に向けて検討を開始した区があるとの報道もなされているようです。
理由は多少異なるものの、東京都も2020年5月5日付通達にて、再開発事業を不要不急の事業であるとして当面休止することを決めています。
(詳しくは、(40)都が再開発事業を凍結!をご参照下さい)
再開発の将来性につき不安を持たれている全国の地権者並びに周辺住民の皆さまも、是非とも一度「住民の声」を行政機関へ伝えることを検討されてみては如何でしょうか?
一般に、事業者側の情報は行政へ頻繁に伝えられるのに対し、住民側の情報はどうしてもその機会が少なくなりがちです。このような状況を是正するためには住民側も行政へ積極的に足を運び、担当部局との良好な関係を保ちつつ定期的に住民側の意見や要望を伝えて行くことが何よりも大切です。
各地の地権者団体や専門家等と意見交換話をしていてよく耳にするのは、地権者の知らぬ間に再開発計画が水面下で進んでしまい「気がつけば再開発がほぼ決定してしまっている」と言ったケースが散見されると言う点です。
これにはいろいろな業界事情も絡んでいるのでしょうが、「地域住民の声が行政へうまく届いていない」ことも一因だと考えます。
皆さまが住む地域におかれましても決してこのような事態とならぬよう、日頃から行政との連絡を密にとられておくことを推奨します。
コロナ禍により、今まで再開発事業を支えてきた前提条件が変化したのですから、当然のことながら私たちも意識改革が必要です。
再開発に対する考え方や見方が変わったのであれば、当然そのことを行政にも知らせなければなりません。
黙っていると再開発事業者のペースでものごとを進められ、気がつけば「こんな筈ではなかった」と後悔することになりかねません。