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(71)住友は本当に「保留床」を買うか?(その2)

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進展はあるのか?それとも泥沼化か?

本トピックスは(63)住友は本当に保留床を買うか?からの続きです。
前トピックスでは、住友不動産が果たして本当に保留床を買うか否かは「不明」だと報じました。地権者に対する書面による保証が存在しないからです。
たとえ将来再開発ビルが建設されたとしても、「保留床」の引き取り手がなければ損失が発生し、それを地権者は共同で負担しなければなりません。
それだけに、地権者はこの問題を避けて再開発を進めるわけには行きません。

準備組合から書簡が届きました!

そんな矢先に、先日泉岳寺の多くの地権者のもとへ準備組合理事会から「皆さまに正しく知って頂きたいこと」なる表題の書簡が届けられました。
日付もなく若干読みづらい文章構成ではありますが、私たちが以前から問題提起してきた住友不動産は果たして本当に保留床を買うのか?に関して住友側から「買い取る」ことの根拠についての説明がなされており、私たちはこれを「進展のきざしが見えてきた」と前向きに捉えています。

私たちが注目したこの記述!

書簡内で彼らは、
「住友不動産(株)による書面での事業に対する確約を求める声もありますが、既に為されているのが実態です。」と記してきました。
地元「地権者の会」が住友不動産に対して求めている書面による保留床の買取り保証(即ち、地権者に金銭的負担が生じないことの保証)に対し、書簡では「住友不動産が保留床を買い取ることは既に決まっているのだから、改めて地権者へ保証を行う必要など無い」と断じたのですから、ある意味では前向きな返答だと言えます。
もし住友不動産が間違いなく保留床を買い取ることが客観的に確認されるならば、地権者も納得する筈で、保留床の買取り問題は一気に解決へと向かうことになるからです。

住友側の行った説明

当該書簡を読みますと、保留床の買取り問題について住友不動産側は保留床を買い取る根拠として以下のような説明をしています。
1. 住友不動産は現在「事業協力者」なる立場だが、本組合設立以降は「参加組合員」となる。
2. その「参加組合員」の主な役割は、保留床(権利者が取得する以外の床)を組合から取得することである。
3. 保留床を取得することに関しては、住友不動産と準備組合との間で締結された「覚書」に書いてある。
4. そして、その証として締結済の「覚書」の写しを書簡内に掲載。
(実際に書簡内にそれが載っています)

上記の如く極めて理路整然とした説明であり、私たちも高く評価しています。
しかし一つだけ問題が! それは書簡に掲載された「覚書」の写しです。

字が小さすぎて内容が判読すら出来ません!

そこで地元「地権者の会」では会報を通じて住友不動産側に対し、「覚書」の全文を地権者が確認できる形での再公開を求めました!

「覚書」が小さすぎて内容が判読出来ないため、住友不動産が間違いなく保留床を買い取ること(即ち、地権者に金銭的負担が生じないこと)は、現時点ではまだ確認できていません。しかし、客観的にこのことが確認されれば、保留床の買取り問題は一気に解決方向へと向かう筈です。

また住友側は書簡内で、「住友不動産(株)に対し書面での確約を求める声もあるが、既に為されているのが実態」とまで言い切っていますので、多分真実なのでしょう。だとすれば、あとは保留床の買取りが確実に行われることを確認するだけです。
そのためにも先ずは「覚書」に記載された条文の全てを読む必要があります。
このため早急に「覚書」全文が読める形での公開を住友側へ求めているところです。

まとめ

新型コロナ感染拡大はテレワークの普及を通じて都心オフィスビルの需要縮小(=空室率の上昇)をもたらしています。また収束したとしても、社会が以前の状況に戻ることはなく、私たちの「働き方」や「生活様式」に根本的な変革をもたらす可能性が高いと言われています。
その様な状況下で、「これから高層の再開発ビルを建設しても果たして保留床が埋まるのか」と言う不安が顕在化してきています。もし保留床が処分できないとなれば、損失補てんを行うのは地権者だからです。

このため地元「地権者の会」では住友不動産が保留床を買い取ることを書面で地権者へ保証するよう求め続けて来ましたが、住友側は「買う」とは言っても、それを書面で保証しようとしませんでした。今も状況は同じです。
しかし、今回の書簡で彼らは、
「住友不動産(株)による書面での事業に対する確約を求める声もありますが、既に為されているのが実態です。」とまで言い切っています。
これは即ち、保留床の買取りは間違いないのでわざわざ保証するまでもないと論じているわけであり、地権者にとっては朗報です。
字が小さすぎて判読出来ないものの、彼らは「覚書」まで掲載して来ました。
中身を読めば住友不動産が保留床を必ずや買い取ることが確認できるとの彼らの意思表示であると理解しています。

「覚書」全文の再公開(但し、文字が拡大された形で!)
は多くの地権者が待ち望むところです。

繰り返しになりますが、例え住友不動産から買取りに関する保証が得られなかったとしても、彼らが間違いなく保留床を買い取ること(即ち、地権者に金銭的負担が生じないこと)が客観的に確認されるのであれば、保留床の買取り問題は一気に解決へと向かう筈です。

さてこの問題、いったいどのように進展して行くのか?
コロナ禍のいま、保留床の処分問題は
各地の地権者が悩む共通の問題でもあります。
皆さまも是非とも関心を持って泉岳寺にご注目下さい!

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