「区域外の構築物」の設置にはご注意あれ!
住友不動産の再開発が終わり、地権者が新築の地権者棟へ入居できたとしても、「やれやれ、これでホッと一息!」などと安心はしていられません!
権利変換が終了した後も、地権者たちは永遠に再開発の置き土産で悩まされる可能性が出て来たからです。
その要因の一つが「区域外に設置される構築物」です。
今回は、住友不動産が東京・港区で進める「三田三・四丁目地区再開発事業」(以下「三田3」と言う)で、再開発区域外に設置される「歩行者デッキ」を事例として取り上げ、そのカラクリと業者の手口を解説します。
そもそも「再開発区域外」なのになぜ設置?
先ずは冒頭のイメージ図をご参照下さい。
三田3で計画されている「歩行者デッキ」は42階建ての住友再開発ビルを起点に国道15号線をまたぎJR田町駅方面へ向けて設置される計画ですが、明らかにこれは再開発区域外の設備です。区域外の設備ですから設置する義務はありませんし、また「都市再開発法」の対象外でもあります。
そのような「歩行者デッキ」を住友不動産は如何なる理屈のもとで、再開発組合に設置させることにしたのか?
私たちの住む泉岳寺地区でも三田3と同様の「歩行者デッキ」が住友不動産により提案されているだけに、他人事とは思えません。そこで早速、港区役所から「三田3」の歩行者デッキに係る契約書を入手し中身を調べてみました。そして驚きました!
隣町のデッキはなんと地権者側の「寄付」だった!
契約は港区と再開発組合との間で、「設置契約」及び「維持管理契約」の2種類が締結されています。
そして設置の大義名分はなんと、
組合(=地権者)による港区への社会貢献(=寄付)
となっていました。(添付「契約書抜粋」をご覧下さい)
しかも、「歩行者デッキ」は設置費用の負担だけに止まらず、
将来の「維持管理費」まで地権者が負担
する契約です。
再開発が終了した後も地権者が費用を払い続ける内容です。
しかも契約書には「期限」が記されていません!
地権者には大変酷な内容です!国道をまたぐ大掛かりな構築物であることに加え、契約にはエレベーターの維持管理まで含まれていますので負担額は少さくはありません。金額によっては再開発後の地権者の生活再建にも影響を与えかねません。
果たして地権者はその事実を知っていたのか?
ここがポイントです!地権者がその事実を知り、納得していたのであれば問題はない筈です。しかし、契約書を現地の複数の地権者へ見せたところ、誰もその事実を知りませんでした!
「聞いたことも無い」と皆さん驚かれていました。何かが変です。
再開発組合としては港区と極めて重要な契約を締結したわけですから、組合は地権者へ事前に「歩行者デッキ」の設置と維持管理費負担の情報を提供し、十分な時間を割いて議論するのが当たり前です。三田3でも再開発組合を実質的に主導するのは住友不動産だと地元では認識されていますが、その住友は果たしてそのような重要情報を組合経由地権者へ提供し、そしてしっかりとした議論を地権者との間で行ったのか?
おそらく住友不動産は「組合総会で決議された正当な契約だ」と主張してくるでしょうし、そのこと自体はたぶん事実なのでしょう。
しかし総会での議論も含め、そこに至る過程で十分な説明と議論がなされたのか?まさかとは思いますが、総会を形式的に開催し、委任状ばかりの総会で賛成多数とした可能性はなかったのか?(特に、契約が締結された令和3年~4年にかけては、コロナ禍で各地の組合から「委任状の提出」が推奨されていた時期と重なるだけに、どうしてもこの点が気になります。)
何れにしても「将来の維持管理費まで地権者に負わせること」を地権者が十分理解し納得していたのかは重要なポイントです。
私たちの問いかけに対し、多くの地元地権者たちがその事実を知らなかったことは大変気がかりです。
本格議論が無かったとすれば、都合の悪い話は地権者へ正しく説明しない住友の「悪癖」が三田でも露呈したことになります!
泉岳寺地区では住友は「都合の良い話」しか語らない!
当地区でも三田3と同様、国道をまたぐ「歩行者デッキ」が提案されています。当地の住友不動産社員たちは、歩行者デッキは「利便性の向上に寄与する」、「近隣住民が望んでいる」などと聞こえの良い話ばかりをし続けて来ました。
しかし地権者が設置費を負担する話、しかも「寄付行為」としてこれを行う点、更には地権者が将来の維持管理費まで負担すると言った重要事項を、今まで住友社員たちは一度も地権者に対し具体的に説明してきていません。
これほど重要な話を、住友は5年が経過した今も説明しない一方で、彼らは地権者から「同意書」だけは集め続けて来たのです。地権者を見下す不誠実なやり方だと言わざるを得ません。
もし「泉岳寺の場合は三田3とは違う!」、「寄付扱いにはしない!」と言うのなら、住友不動産は直ちに書面を以て地権者へ詳細を語るべきです。いつまでも準備組合の陰に隠れ、「ああ言えばこう言う」式の曖昧な弁解に終始すべきではありません。
儲かるのは住友、損するのは地権者?
住友はなぜ「区域外」の設備にこだわるのか?それは「寄付」の見返りに、行政から「容積率の緩和」を受けられるからです。
容積率の緩和で潤うのは住友不動産です。何故なら緩和により「保留床」を増加させることが出来るからです。もちろん「権利床」も同様の理屈です。しかし「緩和の恩恵」を住友と地権者とが平等に分配できる仕組みとなっていない点が問題です。
現下では、儲かるのは住友不動産だけです。残念ながら地権者側は以下の如く圧倒的に不利だと言わざるを得ません。
① 区域外の無駄な費用は地権者の還元率減少へ直結。
② 「寄付」なのでそれ自体の地権者への「見返り」は無し。
③ 将来の維持管理費まで地権者が負担。
④ 容積率緩和は、地権者の土地の持ち分を更に減少させる。
まとめ
「区域外の構築物」の恩恵にあずかるのは住友不動産です。
その彼らが貢献によるメリットを総取りする一方で、費用はすべて地権者側に負担させ、再開発終了後に発生する維持管理費まで長期に亘り地権者側へ転嫁させてしまう。
たとえ「組合総会で正式に決議された施策だ」と主張したところで、そこに再開発後に始まる新たな地権者地獄が待ち受けていることに変りはありません。(注)
一方で、三田3では港区との契約が正式に締結された以上、地権者には再開発の終了後も維持管理費を負担して行く義務が生じます。
では今後どのような形で費用が支払われるのか?
現時点ではまだそこまでは決まっていないようですが、私たちが懸念するのは「地権者棟」の管理費に上乗せされて支払われると言うシナリオです。地権者棟へ移り住んだ地権者たちは、再開発が終了した後も費用を負担し続けなければならないと言う現実に直面します。
もしそうなれば、負担額によっては地権者の生活再建にも悪影響を与える可能性が出てきます。
再開発が終了した後も地権者が搾取され続けるなど、地権者自身にとっても想定外であった可能性があり、まさにこのことが、
再開発後に待ち受ける新たな地権者地獄
だと言われる所以です。
実際にそうなるのかはまだわかりません。しかし、早くもその兆候が現地で表面化してきているようです。
次回トピックス(後半)では、地権者地獄に向けての生々しい現状を皆さまへお伝えして参ります。