再開発で町が生まれ変わる筈が…
NHKは11月21日放送のクローズアップ現代において、地権者が被る「再開発事業リスク」の実態を各地の事例と共に報じました。(注1)
まさに地権者目線から見た「こんな筈ではなかった」と言える
事例を取上げた内容で、主な事例は以下の通りでした。
事業費高騰が地権者へしわ寄せとなり跳ね返ってきた事例
【こんな筈ではなかった事例②】
地権者の権利床面積が当初言われていた半分になった事例
【こんな筈ではなかった事例③】
業者所有地が分筆され、いつの間にか同意者が増えた事例
【こんな筈ではなかった事例④】
タワマン乱立の社会インフラ(学校、医療機関)への負荷の事例
特に注目すべきは「土地の分筆」の実態!
クローズアップ現代が特に時間を割いて報じたのが、再開発事業者が「地権者の同意率」を意図的に高める目的で行ったのではと世間が疑う「土地の分筆」の実態についてです。
番組では東京都港区の再開発現場で起きた事例が紹介されました。冒頭のイラストはその「分筆」の実態を示したものです。
この地区では反対者が多く、再開発推進に必要な同意率の達成は困難と見られていました。そこで業者側は自社所有地の「分筆」を実行。1か所の土地を「5分筆」し、もう1か所を「3分筆」したことで地権者(=同意者)を2名→8名へ増やしたのです。これにより「概ね80%の地権者同意」が数字上達成されたとして、港区は粛々と「都市計画決定」に踏みきったのです。
しかし、例え手続き上は合法的だったとしても、再開発事業者側の所有地を「都市計画決定」の直前にまるで羊羹を切るように細かく分筆した行為は、地権者主体の「再開発の基本理念」から逸脱していることは否めません。
しかも分筆された土地には僅か20㎡前後の狭小地が3筆も含まれていたことも疑惑を一層深める結果となりました。都心超一等地のオフィスビル街に「20㎡」では建物も建たないからです。
「都市計画決定」を目前に再開発事業者側が行う「土地の分筆行為」は、果たして「再開発の趣旨」に合致していると言えるのか? クローズアップ現代がこの点を社会へ問題提起したことは、とても有意義だったのではないでしょうか?
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20231121c.html
また当HPでも以下のトピックスにて詳しく報じています。
(109) 虎ノ門でも同意者数の「水増し」が!
(110) 虎ノ門でも同意者数の「水増し」が!(その2)
なぜ業者は「土地の分筆」を行うのか?
それは同意率を意図的に上げるためだと考えられます。
一般に再開発事業者は営利目的で再開発を進めますから、「地権者の同意」が得られぬ地区では、地権者数(=同意者数)を故意に増やしてでも「合意形成」の体裁を整えたいと考える業者が現れても不思議ではありません。そのような業者は、様々な理屈を述べ乍ら自らが地上げした土地を「複数に分筆」して同意者を増やそうとするのだと考えられます。(注2)
再開発業者はこんなことも平気で行う!
似た事例ですが上記画像をご覧ください。これは中野区内にある再開発現場で某再開発事業者が駐車場敷地の一角に設定した借地権です。これでこの業者は再開発上の立派な「権利者」となります。このやり方なら地主と交渉して駐車場内で借地権者を5名、10名と増やすことなど極めて簡単です。
この手口で再開発業者側が意図的に権利者を増やして行けば、前述の「分筆」と同様、地元の「合意形成」など形骸化したも同然となってしまいます。皆さまはこのような再開発業者のやり方をどう思われますか?
まとめ
NHKは「クローズアップ現代」の中で、地権者が被る「再開発事業リスク」の実態を各地の様々な事例と共に報じました。
中でも多くの時間を割いて報じたのが再開発業者側による土地の「細切れ分筆」の実態についてでした。
たとえ分筆の手続そのものは合法だと業者側が弁解したところで、業者主導で行われる分筆行為が結果として
同意率の上昇に明白な影響を与える以上、
断じて許されるべき行為ではありません!
これは業界の「禁じ手」だと言えます。もしこの行為が横行するとなれば、全国の再開発事業は
「最初から出来レース」となってしまうからです。
もし「地権者主体」の再開発事業が、
「細切れ分筆」と言う手口により
業者の意のまま進められるとしたら、
地権者は再開発を考え直すべきです!