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(69)同意者の水増しに注意

投稿日:2021年3月5日

都市計画決定時の
「同意者」水増しにご注意あれ!

事業者は恣意的に「高い同意率」を演出しようとするので要注意!
そのような忠告を首都圏各地の地権者団体や専門家から受けています。
経験に基づくアドバイスは大変貴重であり、ぜひ皆さまと共有させて頂きます。

先ずは都市計画決定の仕組みから知ろう

再開発の第一段階である「都市計画決定」(=法による地域の網掛け)を行うにあたり、実は「地権者の同意率」に関する法的要件は存在しません。
各自治体(=区市町村)にその決定の裁量権が委ねられています。
自治体が決定権を持つとは言え、「大多数の地権者が賛成している」ことはどこでも必須の要件です。このため多くの自治体では独自に基準を設定しており、港区の場合は「概ね80%の地権者同意を取付けること」を事業者へ求めています。(他の市区町村ではその判断基準を「90%」に設定しているところもあるようです。)

実はこの仕組みに問題が…

この仕組みには「同意者数の水増し」を助長しかねない構造的問題が内在しています。都市計画決定の実行に際して、「大多数の地権者が賛成している」、「80%の地権者が同意した」と言った判断は自治体に委ねられます。
注目すべきは、「組合設立」時とは異なり、そこには厳密な法的要件が存在しないと言う点です。
つまり、自治体が判断すれば「都市計画決定」は実行出来てしまうのです。
この仕組みは再開発事業者にとってはまさに「渡りに船」なのです。
それは何故か?
事業者はこの仕組みを逆手に取り、自治体に対して地権者の合意形成があったことを過度に(=不当に)「演出」することが可能になるからです。
もしそこに事業者と自治体職員との間で再開発ありきの「あうんの呼吸」や「暗黙の了解」と言ったものが存在していれば(もちろんその様なことは決してあってはならないことですが!)業者にとってはまさに「濡れ手に粟」となります。
都市計画決定に際して、このような懸念材料が存在することを、先ずは皆さまご認識下さい。

事業者はなぜ不当に演出しようとするのか?

理由は単純です。再開発事業者からすれば「地権者同意」が取れないことには再開発を進めることが出来ないからです。そこで事業者側はあらゆる手段を駆使して「あたかも同意が得られたかの演出」を行い、自治体へ都市計画決定を促すことで再開発を早く進めたいと考えるのです。
考えるだけなら問題はありません。しかし、もしこれが事業者側により実行されるとなれば、それは再開発の前提である「地権者による合意形成」の基本精神を大きく歪める行為となり、私たちはこれを見過ごすわけには行きません。

「高い同意率」が演出される背景

例えば港区は事業者に対して「概ね80%の地権者同意取得」を求めていますが、そもそも「80%の地権者合意」は実際には極めて高いハードルです。
一見順調に見える再開発事業でも合意形成には何年もかかるケースがあり、私たちと同じ港区内にある「三田小山町再開発」に至っては反対運動が起きたこともあり、準備組合設立から都市計画決定まで実に22年を要しています。(因みに、この現場は最近やっと組合が設立された段階で、今も工事開始時期は未定。竣工まで30年以上要することが確実視されています)

再開発は実はとても息の長い事業なのです!

しかし営利目的の再開発事業者としては、黙って待っているわけには行きません。事業計画の遅延は彼らの収益性にも影響を及ぼしかねないからです。
そこで社会規範や企業倫理、法令遵守と言った企業コンプライアンス精神が低い一部の事業者が、敢えて正攻法ではない手段(=不当な手段)を用いて見せかけの「合意形成」を演出しようと工作するのだそうです。

もちろん、全ての再開発事業者が不正行為を行うわけではありません。しかし一部の事業者は、あたかも「多数が賛成している」かの演出を確実に行おうとするので警戒すべし!…
その様な忠告を各地の地権者団体や専門家から受けています。
知識に乏しい私たちにとり、経験者からのこのようなアドバイスは大変貴重であり、是非とも日頃からこの点を踏まえ、しっかり注視して行きたいと考えます。
「備えあれば憂いなし」です。

「多数演出」の事例

繰り返しになりますが、一部の企業コンプライアンスの欠如した不動産業者は「多数が賛成している」との演出を意図的に行うことで自治体に対し都市計画決定の網をかけさせようと工作を試みるのだそうです。
仮に地権者であるAさんが再開発に賛同せず「同意書」を提出しなかったとしても、事業者は勝手に「Aさんは準備組合へ加入している」、「Aさんの住むマンション管理組合は賛同している」、「アンケートへの前向きな回答をAさんが行った」などと言うあらゆる事実を引き合いに「Aさんは再開発に同意した」と見做す演出を行い、自治体に対して「実態とはかけ離れた」(=虚偽の)報告を行うのだそうです。
尚、実際に「演出」が行われた具体的事例に関しては現在取りまとめ中であり、近々新たなトピックスとして詳しく報じることにします。

まとめ

「演出」とは、ある結果を狙ってものごとの進行に操作を施すことを言います。舞台照明や音響設備の演出ならまだしも、地権者の大切な資産に関わる問題で、本人の意に反して「演出」などされたら地権者はそれこそたまったものではありません。
もしこのような不正行為が世間で堂々と横行するようになれば、それこそ全国の再開発事業は最初から「出来レース」となり、地権者の意向とは関係無く、一方的に再開発が決められてしまいます。
その様な事態は社会も一丸となり、何として阻止しなければなりません。

泉岳寺における「都市計画決定」はまだ先の問題ではありますが、私たちは地元の地権者たちと共に、首都圏各地の経験者や専門家からの経験に基づく貴重なアドバイスを真摯に受け止めた上で状況を注視して行く所存です。
そして地権者同意が恣意的に「演出」されることなく、真に公平・公正、且つ透明性ある形で集計されるよう、再開発事業者の行動のみならず、港区役所の対応も併せ注視して行く事とします。その進捗については今後当ホームページにて詳しく全国の皆さまへお伝えして参ります。

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