2019年9月2日付日本経済新聞に「マンション 中古が主役」と言う見出しで記事が掲載されました。
首都圏では新築マンションの成約件数よりも、中古物件(特に駅近の物件)の成約件数が3年連続で上回ったと言う内容です。
その背景として、新築マンションの価格が高くなりすぎた現在、新築にこだわらない層が増え、とりわけ駅近の中古物件の魅力が高まっていると記事は報じています。
この記事を読んで「再開発に逆風が吹きはじめてきたな」と感じた読者も多いのではないでしょうか?
首都圏の再開発予定地には年数の経過したマンションが多く存在します。
私たちの住む泉岳寺周辺地域の再開発計画区域も例外ではありません。
区域内に居住する地権者260名の内、実に230名がマンションの区分所有者です。全体の約9割がマンション地権者で占められています。
そのマンション地権者に対し、事業者は「再開発なら皆さん持ち出し無しで新築マンションに住める」と言った説明で再開発への同意を取ろうとしてきます。
経年劣化したマンションを今後どうするかについて悩むケースは多いです。
事業者側は、「単独建替え」、「全棟売却」、「耐震補強の実施」と言った選択肢を取り上げ、比較表まで作り、費用負担が生じないのは「再開発」だけ、と言った説明でマンション地権者から同意を取り付けようとしているようです。
しかし、今回の日本経済新聞の記事は、「再開発」でも「単独建替え」でも「全棟売却」でもない、他の選択肢があっても良いことを示唆してくれています。
事業者はあまり触れたくないのかもしれませんが、泉岳寺の場合は2020年の「JR高輪ゲートウェイ駅」開業後に資産価格の上昇を見極め、納得の行くタイミングで自己の資産を売却して他所へ移転すると言う選択肢です。(注:将来の不動産価格は様々な要因で変動しますので、あくまでも地権者の自己判断となります)
そもそもマンション地権者は区分所有者として「独立」した存在です。
自己の資産をどう処分するかは、地権者個々人の自由裁量です。
「再開発」でも「単独建替え」でも「全棟売却」でもない、先ずは「資産価値の上昇を時間をかけて見極める」と言う選択肢があっても良い筈です。
私たちの住む泉岳寺では2020年にJR新駅が開業し、多くの住民が駅まで徒歩で行けるようになります。
駅近の中古マンションに人気がシフトし、販売数がいまや新築物件を上回るようになったと言う、冒頭の日本経済新聞の記事はマンション地権者にとり追い風ではないでしょうか? JR新駅開業後の市況の推移が気になります。
全国の再開発でお悩みのマンション地権者の皆さまも、上記のような観点から、もう一度再開発への是非を考え直してみては如何でしょうか?
再開発となれば、
1,竣工まで長期間待たされる、
2,その間、資産の処分にも一定の制約が課される、
3,更に工事期間中は何年も仮住まいを強いられる、
4,引っ越しも2回必要、
5,竣工後に新築物件に移っても「生活再建」が見通せない、
それでも「持ち出し無しで新築マンションに住める」のは魅力かも知れません。
しかし一方で、先ずは再開発への同意を保留し、しばらく資産価値の上昇を見極めた上で、予測通りなら適切な時点で資産を売却し別の物件へと移り住むのも一つの選択肢ではないでしょうか?
この場合、
1,短期間で売却・移転が出来る、
(しかも移転先は自由に選べる)
2,制約を受けることなく自由に資産を処分できる、
3,仮住まいをする必要もない、
4,従い、1度の引っ越しで完了、
5,移転先の「管理費」や「修繕積立金」も明瞭
たしかに再開発と違い「持ち出し無し」とは行きませんが、その点を差し引いても利点の方が多いのではないでしょうか?
泉岳寺に限らず、全国の多くの再開発は主要駅の近くや交通の便の良い地域で計画されることが多いので、状況は似ている筈です。
何も「再開発」だけにこだわらず、それ以外にも様々な選択肢があることを是非知って頂きたいと思います。
(2019.9)