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(144) なぜ「準備組合」は不適格なのか?

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なぜ「準備組合」は相手として不適格なのか?
泉岳寺「地権者の会」では、その主な理由を記した書簡を6月22日付で準備組合理事長宛に送付しました。
その書簡を入手しましたので、解説を交えながら要点を皆さまへわかりやすく説明してまいります。
(住友不動産が関与する「準備組合」は、どこも大同小異ですので、全国の地権者の皆さまにも是非参考として頂きたいと思います。)

そもそも準備組合は任意団体に過ぎない!

この点は当サイトでも説明し尽くした感がありますが、重要な点なので何度でも繰り返し言います。
準備組合が一般的に法的責任も負えない任意の団体である点を踏まえると、そのような団体へ、地権者の大切な資産の処分を託すこと自体が常識的に考えても無理な(=リスクのある)話だと言えます。
大切な土地資産を有する地権者である以上、不動産取引で損をしないためには、「資産のリスク管理」の見地からも「信頼できる相手を選ぶ」と言う心構えがどうしても必要だからです。このことは何も不動産に限ったことではなく、世の中のすべての取引の基本です。
この観点から言えば、地権者が相手とすべきは、実質的な事業主体である住友不動産となります。準備組合ではありません。
準備組合からいかなる「言質」を取り付けたとしても、それは「絵にかいた餅」となりかねないからです。
もし準備組合がどうしても窓口になると言う場合には、住友不動産の裏付けを取ることが必須となります。
この点を準備組合自身も認識すべきであることを地権者団体は準備組合に対し書簡ではっきりと伝えました。

準備組合の地権者対応に問題あり!

泉岳寺の準備組合を4年間見つめ続けた結果わかったことは、地権者側の質問に対し彼らは常に「丁寧に説明している」と主張はするものの、その実態は「説明はするが、正しいのは自分たちで、譲歩するのは地権者側だ」と言う傲慢な姿勢です。
そこにはただただ「現状のままご理解を賜りたい」とのゴリ押しの姿勢しかなく、残念ながら、対等で公平な議論の前提となる「是々非々」の姿勢が彼らには欠如しています。
4年間も彼らを見続けていれば、彼らの手法はわかってしまいます。わかってしまった以上、この様な態度を示す相手と議論しろと言われても無理な話です。
なぜ「準備組合」ではなく、「住友不動産」が地権者の真の交渉相手であるべきなのか? その理由の一つがこの点にあります。
書簡ではこの点を準備組合へ単刀直入に伝えた上、彼らに改心を求めました。

住友不動産が関与する準備組合は
どこも似たような姿勢ではないでしょうか?
「対等でない姿勢」は断じて受け入れるべきではありません!

住友不動産の「表には出ようとしない」姿勢も疑問!

一方で、「準備組合」の裏に隠れ、その「準備組合」を巧みに利用しながら再開発を進めようとする住友不動産の姿勢にも問題があります。
任意団体である準備組合が、自分たちを「事業者」だと主張するのは勝手です。しかし、それを良いことに自分たちは「事業協力者に過ぎない」との理屈で、地権者からの質問や疑念に一切書面で答えようとしない住友不動産の姿勢には大いに問題があります。
再開発への勧誘を4年間も受け続けていれば、実質的な事業主体が住友不動産であることは誰の目にも明らかとなります。
実際に、地権者の元へやって来るのは住友不動産の社員たちです。この実態はもはや隠しようがありません。住友不動産の社員たちは都合の良い話はいくらでもするが、地権者が核心的な質問や疑問を投げかけると彼らは途端に口をつむり、「自分たちは事業協力者にすぎない」との理屈で準備組合の陰に隠れてしまいます。
書面など「記録に残る」行為は一切行おうとしない住友不動産。
地権者団体が「公開質問状」を送付しても住友不動産は回答を拒絶します。そして回答責任を準備組合へ転嫁しようとします。
住友不動産にとり「準備組合」は責任回避の為の都合の良い存在なのでしょうが、地権者はたまったものではありません。
「法的責任も負えない任意団体」からいくら言質を引き出したところで、それは「絵に描いた餅」だからです。
従い、準備組合に対しては、住友不動産が再開発事業者としての責任をしっかり果たすべく、先ずは地権者側の「公開質問」へ率直に対応し、書面で回答することこそが、再開発の議論を進める上での前提となることを書簡ではっきりと伝えました。
(この問題に関しては(97)住友不動産が回答を全面拒否!もご参照下さい)

地権者の権利を蹂躙する準備組合に将来は無い!

再開発が順調に進まない時には、事業者の本音が出てくるものです。
日頃から「地権者の皆さまの準備組合」を標榜しながら、実際には再開発を推し進めるために地権者の諸権利など平気で踏みにじる準備組合。そのような準備組合の「素顔」が露見してきました。

トピックス(143)住友の本音が見えて来たでも報じた通り、同意が集まらないことに危機感を抱いた準備組合は、地権者の要望や権利を蹂躙してまでも再開発が既定路線であることの「既成事実化」を謀ろうとする行動に出ました。
今回、多くの地権者の所有地を、所有者の許可も取らずに勝手に再開発後の鳥瞰図(=上空から斜めに見下ろした図)に書き込み、それを準備組合事務所前で一般大衆に向け貼り出すと言う暴挙に出た泉岳寺の準備組合は、住友再開発への不信感を高めただけで、多くの地権者並びに近隣住民を敵に回す結果となりました。

このように、泉岳寺では「地権者の皆さまの準備組合」の掛け声とは真逆の準備組合の正体が時間の経過と共に露呈しつつあり、その結果、再開発に否定的な姿勢を固める地権者が増えつつある現状にあります。
準備組合に対しては、先ずは「一事が万事」であることを伝えた上、
地権者の意向や権利を踏みにじる態度を続けていては将来は無いことを書簡で伝えました。

まとめ

なぜ「準備組合」は相手として不適格なのか?
今回、泉岳寺の地権者団体が準備組合へ送った書簡の中にその理由が凝縮されています。
同書簡が準備組合に対して伝えようとしたのは、

再開発は地権者を軽視しては決して進まない!

というメッセージです。
このことを準備組合は真摯に「受け止め」、「学び」、そして「改心」する必要があります。
全国の地権者の皆さまも、今までは「準備組合」側の一方的な論理に「何かがおかしい」と思いながらも「受け身」の姿勢だったのではないでしょうか?
しかし、黙っていては問題の解決はありません!
是非、泉岳寺の事例を参考にして頂き、皆さまの地元の準備組合に対して声を上げることが肝要ではないでしょうか?
後日「こんな筈ではなかった!」と後悔しないためにも、このことはとても重要です。

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