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(159)「再開発」に逆風!オフィス需要が大幅に縮小!

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日本経済新聞は2022年11月3日付朝刊の3面、17面の両面において、都心オフィスビルの需要停滞が鮮明になってきたことを大きく報じました。
コロナ禍により「在宅勤務が定着」したこと、「インフレを背景とした景気の先行き不透明感」、「ウクライナ危機による世界経済の混乱」等により、企業がオフィス投資へ一段と消極的になり、その結果、「オフィス空室率が上昇」すると共に「賃料の下落が加速」してきたとの内容です。
(記事の詳細については、日経電子版、日経バックナンバー等にてご確認下さい)

このことは、つまり再開発事業が根本から成り立たなくなる懸念が出て来たことを意味します。

記事は、

港区の空室率が都心5区で最も高く8%を超えた

と報じ、

「新築ビル」に限って見れば空室率は40%にも及ぶ


こと、更には

入居の内定すら無きまま竣工する大型物件が増加中


であることも報じました。

業界では「空室率5%」が好不況の境目だと言われていますので、
空室率8%は深刻な数字です。加えて「新築ビルの空室率が40%」もあるとなれば、もはや再開発どころの話ではありません!

来年は都心各地で新築オフィスビルの開業ラッシュを迎える、いわゆる「2023年問題」を抱えていることから、今後更に「空室率の上昇」と「賃料の下落」が進むことが予想されています。

オフィス需要の変動は、従来のような定期的な「好不況の波」では説明できなくなって来ている点に注意が必要です。
着目すべきは、コロナ禍を契機に、いわゆる「働き方改革」が半ば強制的に推進された結果、多くの企業でテレワークが定着しつつあり、人口も都心部から郊外へ分散しつつあると言う現実です。「好不況の波」とは異なる「社会構造自体の変革」が起きているだけに、オフィス需要が今後も減少に向かう可能性が増して来ています。

このことは「オフィス需要の拡大」を前提とする一般の再開発事業にとっては間違いなく逆風となります。
これから「再開発ビル」を建設したところで、空室ばかりで保留床が処分できなければ、多くの場合、地権者がその損失を被ることになります。

再開発業者はなぜそれでも「再開発推進」なのか?

それは事業で損失が生じても、それを負担するのは地権者だからです。再開発事業者が「事業リスク」を負担するのではありません。
全国の再開発計画の大半は「第一種市街地再開発事業」と言い、地権者が事業リスクを負う形態の再開発事業です。
従い、再開発事業者(当地区の場合は住友不動産)は再開発にさえ持ち込むことができれば、事業リスクを地権者へ転嫁できるだけでなく、容積率の緩和を通じ膨大な面積の保留床を得ることができ、更には行政から100億円規模の補助金まで貰えると言うのですから、営利目的の民間再開発業者にとりこれほど旨い不動産取引は他にありません。彼らが準備組合と言う任意団体を利用して地権者から執拗に再開発への「同意」を取り付けようとするのはそのためです。

逆に、地権者は地獄を見ることになる!

「事業リスク」を取ると言うことは、自己責任で事業に参画することを意味しますが、それ自体は決して悪いことではありません。
結果が「凶」と出れば損失が生じる反面、「吉」と出れば利益を享受できるからです。しかし再開発事業の場合はそうではないようです(少なくとも、当地の住友再開発はそうではありません)
「凶」と出れば無限責任を負わされる一方で、「吉」と出ても得るのは基本的に「等価相当の床」だけだからです。
リターンが最初から期待できない以上、地権者には「事業リスク」を取ってまで再開発を進める意義などありません。
更に、土地所有者に至っては「土地」が「床」と言う減価償却資産へ変換されることで、資産価値が時間の経過と共に減って行きますから、確実に損をします。
例えば、1千万円の「土地」を、同額の「高級乗用車」と交換することをイメージしてみれば、誰にでもこのことは理解できる筈です。
この点に関して、準備組合も住友不動産も地権者に対し詳しく説明をしようとはしません。真実を語れば誰も再開発へ同意しなくなるから正直に言えないのでしょう。

過去に、岡山県津山市では、再開発業者の言われるまま身分不相応な再開発ビルを建設した結果、床が処分できず、地権者のほぼ全員が損失補填で資産を失い、自己破産者も出ました。
[詳しくは、(55):地権者必見!再開発の破たん事例(その1)(56):地権者必見!再開発の破たん事例(その2)をご参照下さい。]

新たに再開発ビルを建設しても、「空室率が40%」と言った現況下では、地権者が損失を被るであろうことは容易に想像できます。

準備組合はどう答えているか?

この懸念に対し、当地の準備組合は「事業協力に関する覚書」において「住友は保留床の買取を約束している」と述べるだけで、地権者へは具体的詳細を示そうとしません。
「覚書」が全文開示されないため内容の検証も出来ません。
その一方で、契約の相手方である住友不動産はこの問題に固く口を閉ざしています。どう考えても不審な不動産話だと言わざるを得ません。
「保留床の買取を約束する」だけなら誰でも宣言できます。問題はいくらで買うかです。例え現段階では具体的金額までは明示出来ないにしても、住友が市場の実勢価格で引き取ることが覚書に明記されている必要があります。結局のところ、「覚書」が全面開示されぬ限り詳細の確認はできません。
しかし「準備組合」は、なかなかこれを開示しようとはしません。

まとめ

日経新聞は都心オフィスビルの需要停滞が鮮明になってきたと報じましたが、実は日経新聞は2021年1月14日にも同様の報道を行っています。[(65)オフィス空室率が急上昇をご参照]
その当時の港区の空室率は5.79%でした。これに対して現在の空室率は8%超ですから、空室率は今も上昇の一途であることがお分かりいただけると思います。大型ビルの開業ラッシュを迎える「2023年」には空室率が10%を超える可能性さえあります。
新築ビルに限って言えば「空室率が50%超」となる事態も現実味を帯びてきました。これでは再開発どころの話ではありません
再開発を取り巻く事業環境が根本から変化した可能性があります。
再開発ビルを建てて損失が生じれば、補填するのは地権者です。再開発事業者ではありません。
ここに地権者が再開発へ応じることの大きなリスクがあります。

地権者がこのことに気付き、声を上げない限り再開発は事業者側の一方的なペースで進められてしまいます。「事業リスク」をとらない再開発業者にとっては、不動産市況よりも再開発を進めること自体が彼らの利益につながるからです。
ですから準備組合はどこも、このようなリスクについて地権者へ詳しく説明しようとしないと言うのが現実ではないでしょうか?

「地権者が主体」である筈の準備組合が、再開発事業者と締結した覚書すら地権者へ開示しようとせず、ひたすら「業者側が買取るから大丈夫」などと言う曖昧な説明に終始するようであれば、即刻そのような準備組合からは身を引くべきです。
良い話はしても、悪い話はしない。問題を指摘されても巧みな言葉でその場を切り抜けると言うのが、住友再開発の手法であることが地権者目線から見えて来ました。

再開発話には「落とし穴」が多いので、素人である地権者には「石橋をたたいても渡らない」慎重姿勢が求められます。
安易な妥協は禁物です。
自身で「理解」し「納得」しない限り決して再開発には同意しない!
地権者にとり、このことが何よりも大切ではないでしょうか?

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