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(208)事業費高騰で地権者はどうなる?

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昨今、建設資材の高騰や職人不足等の影響を受け事業費が急騰しており、ここ3年間で総事業費は30~50%も上昇したと言われています。
2025年に開催予定の大阪・関西万博の会場建設費が5年間で1,250億円から最大2,350億円へと1.9倍も増加したことは皆さまご存じの通り。再開発の現場も例外ではありません。
事業費の高騰は、当然のことながら再開発で建設されるオフィスビルの賃料やタワマンの分譲価格などを押し上げる要因となります。
しかしあいにくと需要は減少傾向にあります。コロナ禍で在宅勤務が普及した結果オフィス需要は減少し、今や都心の新築再開発ビルの空室率は二桁を超える悲惨な状況にあります。一方、タワマンの人気や需要にも陰りが見え始めています。日銀のゼロ金利政策が解除され、市中の貸し出し金利が上昇し始めれば一気に需要が冷え込む懸念も専門家により指摘されています。
今や再開発業界は「コスト上昇」と「需要減少」のダブルパンチを受け、「一寸先は闇」だと言っても過言ではありません。

地権者はどうなる?

そのような環境下で「それでも再開発を進める!」となった場合、地権者は果たしてどのような影響を受けるのか?
再開発(第一種市街地再開発事業)は地権者が事業リスクを負担して進める事業なだけに、地権者側がこの問題に「無知」、「無関心」、「他人任せ」でいることはもはや許されません。
もし地権者が自らとは利益相反関係にある再開発事業者側の説明を鵜呑みにして事業を進めれば大やけどを負いかねないからです。(注1)
本トピックスでは事業費高騰が地権者へ与える影響、及び注意点について考えてみます。

(注1) 地権者が事業リスクを負う事業の怖さは岡山県津山市の再開発事業で証明されています。津山市の再開発事業では、地権者たちがデベロッパー側の説明を鵜呑みにし、事業全体を他人任せにした結果、膨大な額の事業損失が生じ、再開発に応じた地権者全員が権利床のすべてを失い、自己破産者が続出する結末となりました。
詳しくは、以下のトピックスをご参照ください。
(55)地権者必見!再開発の破たん事例(その1)
(56)地権者必見!再開発の破たん事例(その2)

その前に

皆さまには、以下の3点についてご理解を頂いているとの前提で話を進めて参ります。(注2)
再開発事業の基本的構図(上記イラストご参照)、
地権者の「権利床」が決まる仕組み、
再開発業者が「保留床の安値独占」に向けて仕掛ける様々なカラクリと手口、

結局、地権者はこうなる!

都内複数の再開発現場で実際に行われている事業者側との条件交渉をモニタリングした結果、以下の状況が明らかとなって来ました。
あくまでも一般論であり、個別の現場で多少数字や状況は異なって来ます。しかし基本は一緒ですので、地権者の皆さまは事業費の高騰に乗じて損をすることが無いよう、是非とも参考にして頂ければと思います。

これだけは知っておこう!


① 総事業費は直近3年間で概ね30%~50%程度上昇している。
② もし事業費増加率 = 保留床単価増加率となるなら地権者の得る「権利床面積」(=還元率)は変わらない
③ しかし事業費増加率 〉 保留床単価増加率の場合、差の分だけ「権利床面積」は減り地権者は損をする
④ 逆に、事業費増加率 〈 保留床単価増加率なら、差の分だけ「権利床面積」は増え地権者は得をする
⑤ 一方、事業費大幅増加 〉 保留床単価据え置きとなった場合、地権者は最悪の場合、権利床のすべてを失う懸念があるので要注意!

要するに、再開発事業者(=参加組合員)が購入する「保留床の単価」が事業費の上昇に伴いどう変動するかで、地権者の得る権利床面積(=還元率)は決定されます。←ここは大変重要なポイントです!
重要なだけに地権者は業者が購入する「保留床単価」が、事業費高騰を口実に近隣相場から乖離した激安価格とならぬよう、専門家と共に注視して行くことが不可欠です。
まさかとお思いでしょうが、業者の中には組合役員を誘導したり、自社の息のかかった鑑定士を起用するなどして、「相場の半値以下」と言った激安の保留床単価を正当化しようとする先もあるので注意が必要です。

その他、地権者が知っておくべき事項

1.デベロッパー側の基本戦略について

工事費増加に伴う事業費の高騰で、オフィス賃料やマンションの売値を上げたいと言うのが再開発事業者側の本音。しかし一方で需要面から見ると、オフィス賃料はコロナ禍の影響でむしろ低下傾向にあり、都心部のマンション価格もかろうじて高騰は続いているものの、今後の金利動向等によっては需要が一気に減少しかねないリスクをはらんでいます。
このような経済情勢は、本来なら再開発を止まらせる要因となる筈です。
しかし、それでも彼らが再開発を推進しようとするのはいったい何故か?
それはまさしく「再開発は地権者が事業リスクを負う事業」である点にあると言っても過言ではありません。
再開発事業者(=参加組合員)は、保留床を激安単価で独占することさえ出来れば、オフィス賃料やマンションの分譲価格をその分下げることができるので利益は十分確保できると言う算段です。しかしその裏で犠牲となるのは地権者であることを地権者は忘れるべきではありません。

2.再開発を地権者主体で円滑に進めるには

事業費高騰下で業者に言われるまま事業を進めたらどうなるのか?
事業費増は着工前であれば「地権者の権利床の減少」(=還元率の低下)をもたらします。着工後であれば「地権者の追加負担」をもたらす懸念があります。再開発では地権者が事業リスクを負担することになっているからです。このままでは地権者が犠牲を強いられる結果となります。
しかし前述したように、

事業費増加率 = 保留床単価増加率

即ち、デベロッパーが購入する「保留床単価」を事業費の増加率にスライドさせることが出来れば、着工前・着工後の何れのリスクも地権者は回避することが可能となり、地権者は「権利床面積」(=還元率)の安定確保が可能となります。
これを「リスクヘッジ」と言いますが、ビジネスの世界では日常的に行われているリスク回避策ですので、地権者だからと言って動じる必要など全くありません。自信を持って堂々と正論をかざして事業者側と交渉すべきですし、まさにこれを行うことこそが再開発事業を円滑に進める最大の鍵となるのではないでしょうか?

まとめ

過去のトピックスでも再三お伝えしてきた通り、再開発事業者側の関心は「保留床をいかに格安で独占するか」と言う点にあります。
保留床は彼らにとり一番の収益源であるだけに、たとえ経済環境の変化で事業費が50%上昇しても、事業者側はそれに応じて保留床を50%引き上げようなどと自ら言い出すことはしないでしょう。それどころか地権者が無知・無関心・他人任せだと判断すれば、自社の息のかかった鑑定士などを起用して保留床単価の据え置きすら提案しかねません。もしそれが現実となれば地権者は地獄を見ることになります。地権者が得る筈であった権利床面積(=還元率)が減る結果を招くからです。

再開発は地権者が「主体」となり「事業リスク」を自ら背負いながら進める事業です。それだけに、地権者はコロナ禍以降、再開発を取り巻く経済環境が激変した現実(=オフィス需要の減少等)や、資材高騰や職人不足で事業費が高騰している現実をしっかりと見極める必要があります。
地権者とは利害が異なる再開発業者の説明を決して鵜呑みにすべきではありませんし、こう言う時期だからこそ再開発事業者とは対等な立場で交渉を進め、積極的にリスクヘッジ策を講じて行くことが何よりも肝要ではないでしょうか?

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